警廃事件

警廃事件の概要

警廃事件（けいはいじけん）は、1926年7月18日に長野県長野市の城山公園で発生した一連の騒乱で、長野県警察部による警察署の統廃合に対する住民の激しい反発が原因でした。この事件は当時「長野騒擾事件」として知られていました。

事件の発端

事件の発端は、1926年6月15日に内務省が各府県に対して警察機構の整理を命じたことに始まります。これに従って、長野県知事の梅谷光貞は警察署の統廃合を進めることを決定しました。当時、長野県には警察署と分署が16ヶ所ずつありましたが、人口動態の変化により配置に不具合が生じていました。梅谷は大規模な警察署を中心に警察機構を再編成することを要求しましたが、県警察部内ではこの方針に反対意見が数多く存在しました。

特に警察部長の竹下豊次は、「警察署数を維持しつつ分署を統廃合する」案を提案しましたが、梅谷はこの提案を拒否し、最終的には知事命令で竹下を従わせ、大警察主義に基づく改革案が策定されました。そして、梅谷は改革案を県民に告示することなく、即座に施行しました。この行動が県民の激しい反発を招く結果となりました。

事件の経過

執行される前に住民の意見を無視したため、三つの町（岩村田町、中野町、屋代町）の住民は直ちに反対運動を開始しました。運動の初期段階は県に対する陳情といった平和的手段にとどまっていましたが、県は住民の声を無視し続けたため、不満は高まり、最終的には「復活期成同盟」という運動組織が結成されます。

7月18日、復活期成同盟は城山公園で県民大会を開催することを決定し、警察の許可を得て、三町民が交通手段を調整して市に向かうことにしました。大会当日は、最初に長野市に到着した岩村田町民の第一陣が無事に公園に到着しましたが、その後の第二陣が到着する頃には暴動に発展する事態となりました。

第二陣の岩村田町民と屋代町民が合流した際、群衆は警察の制止を振り切って県庁に向かい、暴徒化しました。県庁では警備していた警察官に対する集団暴力や投石が行われ、県知事の梅谷公舎や警察部長の公舎も襲撃されました。知事は自身の公舎で襲撃を受け、怪我を負いました。このように、最初の予定を大幅に逸脱した行動が続きました。

騒乱の収束

その後も群衆は県会議事堂を取り囲み、暴動が再燃。群衆の中には暴力行為に及ぶ者もおり、混乱が続く中で、最終的にエスカレーションが回避されました。群衆の激昂した感情を抑えるために、県議が交渉し、なんとか騒乱は終息を迎えました。

事件後の影響

警廃事件後、警察による一斉摘発が行われ、最終的に多くの住民が検挙されました。この事件は政治にも大きな影響を与え、与党と野党の間で激しい論争が繰り広げられました。最終的に、梅谷知事は事件の責任を問われ免官となり、後継知事は住民の意見を取り入れた改革を実施しました。

また、事件を受けて知事公選制度の必要性が叫ばれるようになり、県民の意志を反映した知事選挙を求める声が高まりました。とはいえ、実際に第1回の知事選挙が実施されるのは1947年になるまで待たねばなりませんでした。

現在の記念碑

現在、当時の警察署は改名されて存在しており、長野県中野市には警廃事件記念塔があり、また佐久市岩村田には警廃の碑が建設されています。これらの記念碑は、歴史的な教訓として今も多くの人々に語り継がれています。

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