譲状

譲状（ゆずりじょう）とは

譲状とは、古代から中世にかけて、所領などの財産を親族などに譲渡する際に、その事実を証明するために作成された証文のことです。別名、処分状とも呼ばれます。

譲状の役割

譲状は、主に相続による遺産配分に関する取り決めを、被相続人（財産を譲る人）が相続人である親族に渡すケースで用いられました。特に、単独相続制が確立する以前は、財産の分割方法や相続人を明確にするために重要な役割を果たしました。室町時代中期以降は単独相続が主流となり、譲状が作成される機会は減りましたが、戦国時代には家督相続の後継者を指名する際に、その正当性を示すために用いられることもありました。

譲状と処分状の違い

譲状と処分状は、書式に若干の違いがあります。譲状には、冒頭に必ず「譲与（譲り与う）」という文言が記されるのに対し、処分状は冒頭または文中に「処分」という語が用いられます。しかし、その趣旨や内容に大きな違いはありません。また、僧侶が寺院を弟子に譲渡する際には、同様の目的で付属状が作成されました。

譲状の形式

平安時代前期には、譲渡の約束を保証してもらうために「解」の書式を用いた文書が作成されていましたが、平安時代後期には一定の書式が定められました。譲状の場合、「譲与～～事」という書き出しで始まり、「譲渡（譲り渡す）○○」と譲渡対象が記述され、最後に「譲状如件（譲状件の如し）」で締めくくるのが一般的でした。処分状の場合は、冒頭または文中に「処分」の語が含まれます。譲状は後日、法的な証拠となるため、日付は年号から書き、本人の自筆署名と証人の加判が必要でした。

正式な書式に則っていない文書でも効力は認められる場合がありましたが、正式な証文としては扱われず、法的に不利になることもありました。

譲状の取り消し「悔返（くいがえし）」

譲状は、相続のように後日効果を発揮するケースも多く、期日前に譲渡の約束が取り消されることもありました。これを「悔返」といいます。公家法では悔返は認められていませんでしたが、武家法では、後から作成された譲状を有効とするという形で認められていました。ただし、悔返が認められるのは妻妾や子孫に対する譲渡に限られ、兄弟などへの譲渡は他人への譲渡とみなされ、認められませんでした。そのため、弟や甥に家督を譲る場合は、養子縁組をして親子関係を結ぶことが行われました。

幕府による安堵

鎌倉幕府は、御家人の義務遂行能力を確保するため、所領相続の円滑化に関心を抱き、譲状を幕府に提出させました。それに応じて、惣領には下文（将軍家政所下文）、庶子には下知状（関東下知状）という形式の安堵状を与え、譲状の内容を保証しました。嘉元元年（1303年）以降は、惣領・庶子ともに下知状に倣う形式で、譲状の袖（外題）に「安堵」の文字を加える外題安堵が行われました。室町幕府も安堵方という役職を設置し、同様の処理を行いました。

譲状は、当時の社会における財産譲渡の重要な証拠であり、その形式や運用方法を通じて、当時の社会制度や家族関係を理解する上で貴重な資料となっています。

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