谷岡武雄

谷岡 武雄（たにおか たけお）は、1916年3月14日に京都府綴喜郡多賀村（現在の井手町）で生まれ、2014年6月14日に98歳でその生涯を閉じた、日本の著名な地理学者です。立命館大学の名誉教授、学校法人立命館の名誉役員であり、かつては立命館大学の学長および学校法人立命館の総長を務めました。

初期経歴と地理学への道

谷岡氏は京都府師範学校（現在の京都教育大学）の本科を卒業後、専攻科を修了し、小学校の訓導として教職に就きました。多忙な勤務の傍ら、立命館大学予科で研鑽を積み、1944年（昭和19年）には立命館大学法文学部地理学科を卒業しました。卒業後、立命館大学の教員となり、助教授、そして教授を歴任。文学部の学部長も務めるなど、大学教育に深く関わります。

地理学者としての研究活動も精力的に行い、1962年（昭和37年）には東京大学から理学博士の学位を授与されました。この時の論文テーマは「近畿における平野の発達に関する地理学的研究」であり、日本の地形発達史、特に近畿地方の平野形成に関する貢献は学界で高く評価されています。

立命館大学総長としての改革

一度は立命館大学を離れ、中部大学に移籍しましたが、1984年（昭和59年）には立命館大学の総長選挙で推薦を受けて当選。1985年から1990年にかけて、立命館学園でキャリアを重ねた人物として再び大学のトップとして復帰しました。

総長としての谷岡氏は、学園の国際化と教育改革を重点課題に掲げました。特に、キャンパス環境の整備と美化を進める一方で、グローバル化に対応するための教育体制構築に注力しました。その最大の成果の一つが、1988年（昭和63年）に実現した国際関係学部の創設です。地理学界を含む幅広い人脈を生かし、文芸評論家の加藤周一氏や中国文学研究者の竹内実氏といった著名な学者らを教授として招聘するなど、新学部設置のために奔走しました。その結果、国際関係学部の初年度の志願者倍率は41.2倍という異例の高倍率を記録し、大きな注目を集めました。

谷岡氏が主導して設立された国際関係学部は、その後の立命館大学における国際化を象徴する存在となり、日本の私立大学としては初めて、国際関係大学院協会の正規会員となるなど、大学を代表する学部へと発展しました。

地理学者としての国際的評価と活動

地理学における谷岡氏の功績は、国内外で高く評価されています。海外の学術機関からも表彰されるなど、国際舞台でもその存在感を示しました。また、日本の人文地理学の発展にも寄与し、1974年（昭和49年）11月から1976年（昭和51年）10月までの間、人文地理学会の会長を務めました。研究者としては、多数の著作を世に送り出す一方、活発にシンポジウムや講演会に参加し、自らの研究成果や地理学に関する考えを発信し続けました。

受賞・栄典

谷岡氏はその多大な功績により、数々の栄誉を受けました。

1975年：ベルギー・リエージュ大学賞
1991年：勲二等旭日重光章
2004年：フランス共和国教育功労章コマンドゥール

主要な著書

谷岡氏は地理学、特に人文地理学や歴史地理学、そしてフランスに関する多くの著作を残しています。

『人文地理学序説 人間理解の一つの試み』（1955）
『平野の地理 平野の発達と開発に関する比較歴史地理学方法論』（1963）
『平野の開発 近畿を中心として』（1964）
『フランスの農村 その地理学的研究』（1966）
『人間をとらえる あなたはどこまで人間を知っていますか』（1970）
『ホモ・ハビタートル 巨大都市の終り』（1972）
『地理学への道』（1973）
『聖徳太子の榜示石』（1976）
『歴史地理学』（1979）
『巨大都市の終焉』（1981）
『地中海の都市を歩く』（1983）
『フランスの都市を歩く』（1983）
『ラ=フランス』（1989）
『フランス土地の心 南仏編』（1995）
『フランス土地の心 北仏編』（1997）
『ヨーロッパ都市の歴史街道』（2000）
『野道の歴史を歩く1 京都・山城』（2002）
『野道の歴史を歩く2 奈良・大和』（2003）
『野道の歴史を歩く3 滋賀・近江』（2005）
『世界・日本文化風土論』（2006）
『関西 ル=クワンサイ その生活と環境』（2010）

共編著や翻訳書も多数手掛け、地理学の研究成果を広く社会に発信し続けました。

晩年と死去

晩年は京都府宇治市の自宅で過ごし、2014年6月14日午前11時35分、老衰のため98年の生涯を閉じました。

谷岡武雄氏は、地理学者として日本の地形や歴史地理学に深い研究を残し、人文地理学会の発展に貢献すると同時に、立命館大学の総長として教育改革、特に国際化を強力に推進し、その後の大学のあり方に大きな影響を与えた人物です。その功績は、学術界および教育界において長く記憶されるでしょう。

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