谷村城

谷村城の概要

谷村城は、山梨県都留市上谷一丁目に位置する、かつての日本の城です。この城は、甲斐国東部の郡内地方を支配した小山田氏の居館、または近世の大名居館として機能しました。別名として谷村館とも呼ばれています。

立地と歴史的景観

谷村城は、県東部の郡内地方の中心部、狭い平野に位置しています。具体的には、蟻山と桂川に挟まれた平坦地に立地しており、標高は約490メートルです。この地は、甲州街道から分岐して富士吉田市へと至る富士道が南北に通る、交通の要衝でもありました。城の位置は、近世の城下絵図などから都留市役所から都留市立谷村第一小学校付近と推定されていますが、具体的な遺構はまだ発見されていません。

小山田氏時代の谷村館

戦国時代、都留郡では小山田氏が勢力を拡大しました。「向嶽寺文書」によると、1499年には小山田信長が都留郡田原郷を向嶽庵に返還しています。小山田信有の時代には、大幡川左岸の中津森館を居館としていましたが、その後、谷村に拠点を移したと考えられています。1530年には中津森館が焼失し、武田氏の支援を受けて谷村に新たな居館が築かれました。この居館は、越中守信有、弥三郎信有、信茂と小山田氏4代にわたり使用されました。また、谷村城の対岸にある城山には、勝山城が存在し、谷村城の詰城であった可能性も指摘されています。

天正壬午の乱と徳川氏時代の谷村城

1582年、武田氏が滅亡し、小山田信茂も処刑されたため小山田氏は滅亡しました。その後、郡内は織田信長の家臣・河尻秀隆が領有しましたが、本能寺の変により秀隆が落命。その後の天正壬午の乱では、徳川家康が甲斐を支配し、谷村城も修築が行われたと考えられています。家康は、都留郡支配のため家臣の鳥居元忠を配置しましたが、当初は岩殿城を拠点としていました。

豊臣大名・谷村藩時代の谷村館

徳川氏が関東に移封された後も、谷村は郡内地方の支配拠点として使われ続けました。豊臣系大名時代には、加藤氏や浅野氏、徳川氏再領時代には鳥居氏が本拠としました。江戸時代に入ると秋元氏が入り、谷村藩が成立。谷村城を中心に城下町が発展しました。しかし、1704年に秋元氏が移封されると、谷村城は廃城となり、郡内領は代官支配となり、谷村は町場へと移行しました。

発掘調査

2014年、初めて本格的な発掘調査が行われました。その結果、石列、敷石、通路状・道路状の遺構が確認され、四方の壁に石積みの地下室（穴蔵）があることも判明しました。また、床部からは炭化種実が、覆土中からは貝類や海水魚類を中心とする動物遺体が出土しました。これらの遺物は、19世紀に谷村陣屋があった頃のもので、当時、多様な海産物がこの地で消費されていたことがわかります。特に、郡内地方では同時期におけるまとまった動物遺体の発見は初めての事例です。

谷村城下町

戦国時代に小山田氏によって築城された谷村城を中心に、城下町が形成されました。小山田氏滅亡後、浅野氏時代には文禄検地が行われ、城下は上谷村と下谷村に分けられました。江戸時代には、谷村藩主の秋元氏により用水堰が開削され、城下町が完成しました。京都から献上される茶壺は、江戸へ運ばれる前に谷村で検分されていました。城下町は、上谷村と下谷村に分かれ、それぞれ独自の町割りがなされていました。城下には富士山を包囲軸とする南北往還が通り、交通の要所となっていました。

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