谷汲鉄道デロ1形電車

谷汲鉄道デロ1形電車の概要

谷汲鉄道デロ1形電車は、名鉄谷汲線の開業に際し、1926年に導入された制御電動車です。この電車には、路線の特性に応じた独自の設計が施されています。

開発と設計

1926年4月に谷汲鉄道の路線が開業する前に、日本車輌製造本店でデロ1からデロ6までの6両が新しく製造されました。これらの電車は、木造の車体を持ち、4輪単車の設計で作られています。形式記号は、当時の二等車両を意味する「ロ」をもとに、電動車を表す「デ」と組み合わせた「デロ」と名付けられました。

特徴

谷汲鉄道の路線には急勾配があり、その運用を考慮して電磁吸着ブレーキが装備されているのが大きな特徴です。また、6両のうち2両は単行運転を可能にする直接制御方式で、それ以外の4両は間接自動制御方式を採用しています。この設計は、特に谷汲山華厳寺の参拝客を運ぶために工夫されました。

車両仕様

この電車は全長9,855 mmで、両運転台仕様を採用しており、前面には均等に配置された3枚の窓があります。側面には、片開きの扉が2箇所と、合計8枚の窓があり、内部はロングシート形式で56人の定員を持っています。

制御方式には、直接制御仕様の2両があり、イングリッシュ・エレクトリック社製の制御装置を搭載しています。一方、間接自動制御仕様の4両は、異なる制御装置を用いています。この差が、自重の違いにも関わっており、各仕様で重量に差が出ています。

運用の歴史

1926年の路線開業時から使用され、直後には美濃電気軌道との直通運転が開始されました。1944年には名古屋鉄道に合併され、形式変更が行われました。旧デロの形式はモ50形となり、新たにモ51からモ56と番号が付けられました。

戦後、デロ1形電車は引き続き活躍し、特に1950年の春季の華厳寺ご開帳時には参拝客の輸送にも利用されました。その後、いくつかの車両が豊川線に移籍し、主力車両として運用されましたが、1954年までに廃車となりました。

廃車後の運命

廃車となった車両の中には、モ100の車体が西尾保育園に、モ101の車体が扶桑町立高雄小学校に寄贈されました。高雄小学校の車体は「仲よし号」として使用されましたが、木造のため劣化が早く、1965年に解体されました。

最終的には、唯一残ったモ105も1959年に除籍され、谷汲鉄道デロ1形に関連するすべての車両が消滅しました。このように、谷汲鉄道デロ1形電車は、地域の交通史において重要な役割を果たした盟友であったと言えるでしょう。

もう一度検索