豊満水力発電所

豊満水力発電所（フォンマンすいりょくはつでんしょ）は、中華人民共和国の吉林省吉林市から南東におよそ24キロメートル離れた場所にある、第二松花江上に位置する大規模な水力発電施設です。この発電所は、付属する豊満ダム（フォンマンダム）の名でも広く知られています。

その建設の歴史は、1931年に勃発した満州事変以降に遡ります。当時、急速に拡大した軍需産業を支えるため、満州地域では深刻な電力不足が課題となっていました。この状況を解決するため、1936年に第二松花江において大規模なダムを建設する計画が策定されました。計画地となった場所は、当時の川幅が700メートルから800メートルにも及ぶ広さでした。豊満ダムの設計は、堤長1,100メートル、高さ91メートル、堤頂幅8メートル、堤体積220万立方メートル、基礎掘削量190万立方メートルという、コンクリート重力式ダムとして類を見ないものでした。建設当時としては、アメリカ合衆国のグランドクリーダムやフーバーダムに次ぐ、世界的に見ても極めて大規模なダム計画の一つでした。

ダムの建設工事は、日本の占領下にあった1937年に開始されました。しかし、1945年8月に第二次世界大戦が終結するまでに、ダム本体の建設は87パーセント、発電機の据え付けは25パーセントまで進んだものの、工事は中断されました。日本の敗戦後、建設途中の施設は一部破壊されたと言われています。その後、中華人民共和国が成立すると、施設の復旧と改造が進められ、計画から長い年月を経た1957年に豊満水力発電所はついに完成しました。

このダム建設に関わった技術者たちが設立した日本の建設会社に、大豊建設株式会社があります。同社の社名である「大豊」は、この豊満ダムに由来しており、建設プロジェクトの大きさと重要性を示すものとなっています。

現在、豊満水力発電所には9台の発電機が設置されており、その総発電容量は55.4万キロワットに達します。年間の平均発電量は18.9億キロワット時とされています。中国東北部の電力ネットワークにおいて、豊満水力発電所は現在も主力発電所の一つとして機能しており、特に電力需要が高まるピーク時の調整や、電力系統における不測の事故に備える重要な役割を担っています。

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