大豊建設

大豊建設株式会社

大豊建設株式会社（だいほうけんせつ）は、東京都中央区新川に本社を置く総合建設業者です。かつて経営再建中であった森本組（大阪市）のスポンサーとなったことでも知られています。

設立経緯と技術的特徴

1949年の設立は、旧満州国で豊満ダムの建設に携わった内務省の土木技術者らが中心となり、満州や台湾、朝鮮などの外地で経験を積んだ技術者たちが集結したことに始まります。資本金500万円で創業された同社の社名「大豊」は、この豊満ダムに由来しています。同社は「信頼に応える確かな技術」をモットーに掲げ、特に土木の特殊技術に強い企業として発展してきました。橋梁基礎などの地下構造物で利用されるニューマチックケーソン工法や、トンネル掘削と同時に壁を構築するシールド工法、さらには防波堤などの水中構造物を製作するためのドルフィンドック工法といった、高度な技術力を活かした施工を得意としています。

事業展開と経営の安定性

近年は建設事業に加え、不動産開発事業にも積極的に取り組んでいます。高齢者向け分譲マンション事業（マスターズコンフォート）や、大規模な物流倉庫（延床面積約3万5千坪、ランプウェイ付きマルチタイプ）の開発などを行っています。また、林業分野にも関与し、木材の生産・加工・販売を一貫して行うMEC Industry（三菱地所グループ）へ出資しています。事業構成は土木事業と建築事業が概ね1対1の比率で、官庁工事と民間工事の受注割合もほぼ同等です。このバランスの取れた事業展開は、マーケットの変動に応じて柔軟に戦略を調整し、安定的な経営を維持するための重要な要素となっています。

海外事業と国際評価

海外事業にも力を入れており、台湾、カンボジア、タイ、マダガスカルに営業拠点を設けています。関連会社としてタイ大豊株式会社とマダガスカル大豊株式会社を有し、各地域で鉄道や道路といった交通インフラから病院、学校などの建築物まで幅広い建設プロジェクトを手掛けています。特に、2006年にマダガスカル南東部で実施された「総合成長重点地区エホアラ港建設工事」は特筆されます。これは、チタン鉱石の積み出しを目的とした大規模な港湾建設プロジェクトであり、米国土木学会の下部組織COPRIより2010年度の「プロジェクト優秀賞」を受賞するなど、国際的な高い評価を受けました。さらに、このエホアラ港の風景は、2017年に発行されたマダガスカルの1万アリアリ紙幣のデザインにも採用されています。

技術研究所による研究開発

2020年には、技術の伝承、進化、そして新たな技術の研究開発を目的として、茨城県の機材センター内に技術研究所を開設しました。研究所の建物には、これからの社会を見据え、CLT材（直交集成板）が導入されています。研究所では、同社が得意とするニューマチックケーソン工法や泥土加圧シールド工法などの深化・進化に加え、新しい分野への技術応用や挑戦、そしてICT技術との融合を重点的に研究開発しています。具体的な研究内容としては、ニューマチックケーソンの高精度な沈下掘削管理を実現するシステムや、掘削機の操作体験・訓練が可能なバーチャルシミュレータ、さらにICTやAIを活用した沈下掘削の自動化技術の開発などがあります。また、シールド工法を実物大で体験できるVRシステムも開発されています。

経営理念と目指す企業像

同社は「顧客第一」「創造と開拓」「共生」「自己責任」の四つを経営理念として掲げています。社員一人ひとりが自己に誇りを持ち、責任ある行動を取り、常に未来を見据えた創造と開拓の精神を持つこと、そして企業として適正な利益を追求しながら、総合力を発揮して社会の各地域に貢献し、その地域社会から真に信頼される「良い会社」であること、さらに社員にとって「夢のある会社」であり続けることを目指しています。創業時の「創立宣言」には、「営業性・政治性を過信せず、誠実と努力と技術力とを以て他を圧倒すること」といった、技術と誠実さを重んじる姿勢が示されています。

国内外拠点と沿革

本社は東京都中央区に位置し、国内には北海道から九州、沖縄まで主要都市を中心に多数の支店・営業所を展開しています。技術研究所は茨城県にあります。海外には前述の通り、台湾、カンボジア、タイ、マダガスカルに営業所を設けています。会社の沿革としては、1949年の設立後、1962年に東京証券取引所第二部、1972年には第一部へ上場しました。関連会社の設立やISO認証の取得を進め、2004年には旧森本組から営業譲受を行い、子会社として森本組を設立しました。2019年に創立70周年を迎え、2020年には技術研究所を開設。2022年には株式会社麻生と資本業務提携契約を締結し、2023年10月には東京証券取引所スタンダード市場へ市場変更しています。

主な施工実績

これまで手掛けた主要なプロジェクトは多岐にわたります。国の重要インフラとしては、レインボーブリッジの芝浦側アンカレイジおよび主塔基礎、東京湾横断道路、柏崎刈羽原子力発電所、荒谷ダムなどがあります。公共建築物では福生市庁舎や福岡刑務所などを施工。交通インフラでは九州新幹線平間トンネルや東京外郭自動車道関連工事にも実績があります。海外ではマダガスカルのエホアラ港建設工事が代表例です。これらの実績は、土木・建築両分野における同社の高い技術力と施工能力を示すものです。

主な関連会社

国内関連会社として、大豊塗装工業株式会社、大豊不動産株式会社、大豊アーキテクノ株式会社、進和機工株式会社、株式会社森本組などがあります。また、海外関連会社としてタイ大豊株式会社、マダガスカル大豊株式会社を有しています。

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