豚屋火事

豚屋火事（ぶたやかじ）

1866年11月26日（旧暦慶応2年10月20日）午前9時頃、横浜の関内、現在の神奈川県横浜市中区尾上町一丁目付近にあった豚肉料理屋「鉄五郎」から出火した大火災です。この火災は、店名にちなんで「豚屋火事」と呼ばれ、横浜開港からわずか7年目の関内を焼き尽くす甚大な被害をもたらしました。また、この火災は「関内大火」や「横浜の大火」とも呼ばれています。

火災の発生と被害

火は瞬く間に燃え広がり、まず港崎遊廓（みよざきゆうかく）に延焼しました。遊廓では400人以上もの遊女が犠牲となり、悲惨な状況となりました。さらに、火の手は外国人居留地や日本人町にも及び、多くの建物が焼失しました。火災は午後10時頃にようやく鎮火しましたが、関内一帯は焦土と化しました。

火災後の復興と都市計画

この大火災を受け、幕府と外国公使団は共同で居留地の再建計画を策定しました。そして、「横浜居留地改造及び競馬場墓地等約書」が締結され、翌年には現在の山手地区が新たに外国人居留地に編入されることになりました。

遊郭の移転と公園の整備

火災の2年前に交わされた「横浜居留地覚書」には、「大火があった場合は再建しない」という条項が含まれていました。この条項に基づき、遊郭は1872年（明治5年）に高島町へと移転しました。

遊郭跡地は、10年後の1876年に避難場所としての機能も備えた洋式公園（現在の横浜公園）として整備されました。これにより、横浜の居留地は日本家屋が立ち並んでいた町並みから、西洋風の景観へと大きく変化することになりました。

豚屋火事の影響

豚屋火事は、横浜の街に大きな爪痕を残しましたが、同時にその後の都市計画や発展に大きな影響を与えました。外国人居留地の拡大や遊郭の移転、そして公園の整備といった変化は、横浜が近代的な都市へと発展していく過程において重要な転換点となりました。

この火災は、横浜の歴史を語る上で決して忘れてはならない出来事であり、当時の人々の苦難と、そこから復興を遂げた横浜の力強さを今に伝えています。

まとめ

豚屋火事は、横浜の都市構造を大きく変えるきっかけとなった大火災でした。火災の悲劇だけでなく、そこから生まれた新たな都市の姿を知ることは、横浜の歴史をより深く理解する上で非常に重要です。

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