豚熱

豚熱（ぶたねつ）について

豚熱（英：Classical Swine Fever、CSF）は、フラビウイルス科ペスチウイルス属によって引き起こされる、ブタおよびイノシシに特有の致死性のウイルス性疾患です。この病気は人間には感染しませんが、農業においては深刻な影響を及ぼすため、注意が必要です。

背景と名称変更

かつては「豚コレラ」という名前で知られていたこの疾患は、1800年代にアメリカで初めて確認された際に、当時流行していた人間のコレラから名前が付けられました。しかし、実際には豚熱はウイルス感染によって引き起こされるものであり、コレラ菌とは無関係です。2019年11月、日本の農林水産省は「豚コレラ」という名称をCSFに変更することを発表し、その後正式に「豚熱」と名付けられました。

原因と感染経路

この病気は、豚熱ウイルスによって引き起こされます。ブタやイノシシにのみ感染し、ヒトには影響を及ぼしません。そのため、豚熱に感染した豚の肉を消費しても、健康へのリスクはありません。ただし、豚熱ウイルスは強力で、特にタンパク質が豊富な環境でも生存します。冷蔵状態で約3ヶ月、冷凍状態では4年以上感染力を保持することがあります。

症状と防疫措置

豚熱の感染した動物では、発熱や食欲不振、急性結膜炎などの症状が観察されます。特に、下痢やリンパ節、臓器の充血、点状出血なども見られます。これらの症状は他の疾病と区別する必要があり、早期の診断が重要です。

多くの場合、豚熱の感染は農場内での動物間の接触や、感染した肉製品からの餌を通じて広がります。特に、日本の沖縄県では、加熱処理されていない食品残渣が原因とされています。防疫措置として、感染が発見された農場では、感染豚の殺処分や消毒が行われます。

日本での感染拡大

日本では2018年9月に岐阜県で再び豚熱が確認され、その後愛知県や長野県に感染が広がりました。特に岐阜県では、野生のイノシシにおける感染が多く報告され、感染範囲が広がる中で、農林水産省はワクチン接種を急遽再開しました。日本国内の養豚場における経営への影響も大きく、感染拡大による損失額は深刻です。

殺処分の動物福祉問題

豚熱の感染防止措置として、感染が確認された豚だけでなく、疑似患畜にも殺処分が行われることがあります。これは特に工場型畜産では頭数が多く、被害が大きくなります。殺処分方法については、国際獣疫事務局（OIE）の動物福祉規約に従った適切な措置が求められていますが、日本においては迅速な殺処分が重視され、動物福祉が十分に考慮されているかは疑問です。

狩猟への影響

豚熱感染の拡大は、日本の狩猟にも影響を及ぼしています。岐阜県では、感染拡大を受けて一定の期間、猟銃による狩猟が全面禁止となりました。他の地域でも同様の防疫措置が実施され、狩猟に対する制限が強化されています。

まとめ

豚熱は、ブタとイノシシにとって非常に危険な疾患であり、日本国内でも重要な農業問題となっています。感染拡大を防ぐためには、適切な防疫措置とともに、豚熱に対する理解と対策が必要とされています。

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