豚赤痢

豚赤痢とは

豚赤痢（ぶたせきり）は、豚に感染する病気であり、豚赤痢菌（Brachyspira hyodysenteriae）によって引き起こされます。この病原体は、特に経口感染を介して広がり、養豚場においては大きな問題となります。また、この病気は家畜伝染病予防法において届出伝染病に分類されているため、その監視と対策が必要です。

原因

豚赤痢の原因となる豚赤痢菌は、長さ7から10マイクロメートル、幅0.3から0.4マイクロメートルのグラム陰性である嫌気的ならせん状菌です。培養した際、血液寒天培地上では薄い膜状のコロニーが形成される特徴があり、多くは強いβ溶血性を示します。この菌は溶血毒や脂多糖（LPS）を持ち、感染は経口を介して行われることが一般的です。感染が持続するため、豚の健康に深刻な影響を与えることがあります。

症状

豚赤痢の感染が成立すると、感染した豚はさまざまな症状を示します。具体的には、元気の低下や食欲不振が見られ、さらに体重が減少することが一般的です。その他にも貧血や粘血性の下痢、または出血性の下痢を引き起こすことがあり、これらの症状は盲腸や結腸、直腸に集中して見られます。腸間膜リンパ節の腫れも確認されることがあります。多くの場合、症状は1から2週間で回復しますが、慢性的な形態をとることもあるため、養豚場内での管理が難しくなることがあります。

診断

診断を行うためには、既往歴や臨床症状、特に肉眼的な病変の確認が重要です。特に大腸に見られる腸炎の散発と、豚赤痢菌自体の分離と同定が診断の確定に寄与します。確定診断には、結腸粘膜や下痢便からの菌の分離を行います。選択培地としては、血液寒天培地に抗生物質を加えた特別な培地が用いられます。迅速診断法としては、糞便材料を使った暗視野鏡検法でらせん菌を直接観察することも行われています。

治療

豚赤痢に対する治療には、抗生物質が用いられます。具体的にはリンコマイシンやチアムリン、エンラマイシン、カルバドックス、バルネムリン、タイロシン、テルデカマイシンなどが効果的とされています。しかし、近年では薬剤耐性菌の割合が増加しているため、治療にあたっては薬剤感受性試験を用い、適切な抗生物質を選択することが重要です。

予防

豚赤痢の予防策として、現在のところ効果的なワクチンは存在しません。そのため、SPF豚の導入やオールイン・オールアウト方式の採用を通じて、病気の清浄化を試みることが推奨されています。また、豚赤痢菌は乾燥に対して弱いため、豚舎の洗浄や消毒を行った後、十分な乾燥を施すことも重要な対策のひとつです。これにより、感染を防ぐ手段となります。

参考文献

• - 鹿江雅光、新城敏晴、高橋英司、田淵清、原澤亮 編『最新家畜微生物学』朝倉書店、1998年4月。ISBN 4-254-46019-8。
• - 清水悠紀臣、明石博臣、小沼操、菅野康則、沢田拓士、辻本元、山本孝史 編『動物の感染症』近代出版、2002年3月。ISBN 4-87402-074-7。

外部リンク

• - 家畜の監視伝染病-豚赤痢 - 農研機構
• - 豚・いのしし編-豚赤痢 - 家畜疾病総合情報システム

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