貨幣大試験

貨幣大試験とは

貨幣大試験（かへいだいしけん）は、造幣局で製造された貨幣が、その量目（重さ）と品位（貴金属の純度）において、定められた基準を満たしているかを検証する、年次で行われる公的な試験です。正式には「製造貨幣大試験」と呼ばれ、財務大臣の監督下で実施されます。この試験は、貨幣に対する国内外からの信頼を維持するために不可欠なものです。

歴史的背景

幕末期、海外からの圧力により、金や銀の地金を持ち込んで自由に貨幣を鋳造できる造幣局の設立が求められました。これに応じ、明治新政府は大阪に造幣局を設立し、西洋式の円形貨幣を製造するようになりました。しかし、製造された貨幣が国際的に信用されるためには、その品質が公的に保証される必要がありました。そのため、製造された貨幣から規定枚数ごとに「供試貨幣（きょうしかへい）」を選び出し、毎年度の貨幣大試験に供することとなりました。

最初の貨幣大試験は明治5年（1872年）に行われ、対象となったのは造幣局創業から試験日までに製造された金貨と銀貨でした。以来、毎年試験が実施され、その結果は『造幣局長年報書』に詳細に記録されています。明治22年度（1889年度）からは、供試貨幣に加え、造幣局内で品位と量目を試験するための「試験貨幣（しけんかへい）」も選ばれるようになりました。

2024年には、第153回目の貨幣大試験が実施されています。

試験内容

貨幣大試験では、主に以下の二つの試験が行われます。

品位試験

品位試験は、貨幣に含まれる貴金属の純度を測定する試験です。

個別分析: 選ばれた供試貨幣を一枚ずつ分析します。
合併鎔解: 1,000枚の供試貨幣をまとめて溶解し、そこからサンプルを採取して分析します。

量目試験

量目試験は、貨幣の重さを測定する試験です。

個別秤量: 選ばれた供試貨幣を一枚ずつ秤量します。
集団秤量: 1,000枚の供試貨幣をまとめて秤量します。

昭和14年（1939年）以降、試験の対象が臨時補助貨幣のみとなったため、1,000枚ごとの量目試験のみが行われるようになりました。

試験に使われた供試貨幣は、通常は溶解され、新たな貨幣の材料として再利用されます。しかし、貨幣の需要が逼迫した場合には、量目試験に使用された供試貨幣が発行に回されることもありました。過去には、明治21年度から22年度、大正15年度から昭和3年度、昭和34年度から39年度、昭和43年度から45年度製造分の供試貨幣の一部または全部が発行に回されています。

試験貨幣選取規定

供試貨幣と試験貨幣は、製造された貨幣の規定枚数ごとに選ばれます。その選取枚数は「試験貨幣選取規定」によって定められています。基本的には、1日に製造された貨幣のうち、規定枚数ごとに1枚が選ばれます。規定枚数に満たない端数についても、選取する時期としない時期がありました。

初期の規定と現在の規定の例を以下に示します。

明治初期（創業 - 明治30年3月）

二十圓 - 五圓金貨：1,000枚につき1枚
二圓、一圓金貨：5,000枚につき1枚
貿易一圓銀貨：5,000枚につき1枚
補助銀貨：2,000枚につき1枚
五錢白銅貨：20,000枚につき1枚

平成19年度

千円記念銀貨：4,000枚および端数につき1枚
五百円（記念・通常）：40,000枚および端数につき1枚
百円、五十円、十円：60,000枚および端数につき1枚
五円：50,000枚および端数につき1枚
一円：400,000枚および端数につき1枚

公差

工業製品である以上、貨幣の量目や品位にはどうしても誤差が生じます。そこで、定められた範囲内の誤差は「公差（こうさ）」として許容されています。例えば、明治初期の金貨と銀貨の公差は以下のようになっています。

参考文献

『造幣局長年報書（第一 - 第百十四年報告書）』　大蔵省造幣局、1875 - 1987年
『明治大正財政史（第13巻）通貨・預金部資金』　大蔵省編纂、1939年
『造幣局百年史（資料編）』　大蔵省造幣局、1974年
財務省ホームページ　国庫・通貨 > 各年度の製造貨幣大試験について

外部リンク

製造貨幣大試験 : 財務省

脚注

関連項目

硬貨
* 日本の硬貨

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