買地券

買地券（ばいちけん）とは

買地券とは、古代東アジアにおいて土地の売買を証明する文書のことです。特に、墓に副葬品として納められる事例が確認されています。

中国における買地券

中国では前漢時代から近世にかけて、買地券が広く用いられました。石、鉛、玉、鉄などの板に、被葬者の情報や墓地の詳細を記し、副葬品として墓に納めました。

買地券には、以下の内容が記されています。

被葬者の住所、氏名、性別、年齢
墓地の所在地、値段、範囲

初期の買地券には実在の土地が記されていましたが、時代が下るにつれて道教の影響を受け、冥界の架空の土地が記されるようになります。また、土地の四方を四獣で囲んだり、売買の証人を西王母や東王父とするなど、宗教的な要素が強くなっていきました。冥界で土地を巡る訴訟が起こった場合に、天地の神（天帝・土伯）に訴えることを明記した例もあります。

朝鮮半島における買地券

朝鮮半島では、百済の武寧王陵から発見された墓誌が買地券の体裁を採っていることが知られています。これは、南朝の影響を受けたものと考えられています。

日本における買地券

日本における買地券の事例としては、福岡県の宮ノ本遺跡から出土したものが著名です。また、江戸時代に備中国（現在の岡山県倉敷市）で出土した塼（せん、煉瓦の一種）の文章が、奈良時代の買地券（谷田部益足買地券）であることが判明しています。

まとめ

買地券は、単なる土地の売買証明書としてだけでなく、死後の世界における土地の所有権を保証し、死者の安寧を願うという宗教的な意味合いも持っていました。古代東アジアの人々の死生観や宗教観を理解する上で、貴重な資料と言えるでしょう。

参考文献
町田章「買地券」（『日本史大事典 5』平凡社、1993年）ISBN 978-4-582-13105-5
町田章「買地券」（『国史大辞典 15』吉川弘文館、1996年）ISBN 978-4-642-00515-9

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