西王母

西王母について

西王母（せいおうぼ、さいおうぼ）は、中国の古代信仰における女神で、天界の最高位の女仙として広く知られています。姓は緱（あるいは楊）、名は回、字は婉姈です。彼女は多くの呼び名を持ち、一般的には「王母娘娘」として親しまれています。この呼称は、彼女が母なる存在であることを示しています。「王母」は祖母や女王に相当し、「西王母」は西方に位置する崑崙山の天界を統治する女王の尊称です。彼女は瑶池と呼ばれる天界の庭園を持ち、所有するすべての女仙に対する支配的存在とされています。

西王母の歴史的背景

歴史的に見ると、西王母は殷墟で発見された甲骨文字において「西母」として存在が確認され、これが彼女の前身と考えられています。また、『山海経』に記録された彼女の姿は個性的です。「西王母の山」、または「玉山」に住む彼女は、人間の姿を持ちながら、動物の特性（豹の尾や虎の下半身）も併せ持つとされています。この印象的な外観には、多彩な象徴が織り込まれています。

文献に見る西王母

春秋時代には『穆天子伝』において、周の穆王が彼女に会い、最高の礼を尽くした逸話が語られ、彼女の姿は人間そのものでした。この文献に基づくと、西王母の住居は洛陽から西に1000キロメートルの場所にある「西王母の邦」とされています。彼女の持つ特別な力は、やがて神仙思想と結びつき、漢代にはさらに強固なものとなっていきます。

女仙への進化

漢代において、西王母は神仙思想と融合してその姿を変えていきました。男性的な要素を持つ神として東王父と対となり、共に不老不死の調和を示す角色を担います。また、様々な神話や文学作品において彼女の特異な能力が描かれています。『荘子』や『淮南子』でも、彼女は不死の薬を持つ存在として語られます。

道教における位置づけ

道教において、西王母は「天界の美しい女仙」という完璧なイメージを持つようになりました。彼女は不老不死の仙桃を管理し、艶やかな麗しさをもって信仰対象となります。特に、旧暦三月三日の「桃の節句」は彼女の誕生日とされ、この日に信者たちが彼女の瑶池に集まることが伝えられています。

民間伝説と文化的影響

彼女はまたさまざまな民間伝説にも登場し、「牛郎織女」や「董永と七仙女」といった物語に深く関わっています。また、『西遊記』や『封神演義』などの古典文学にも登場し、彼女の役割は非常に重要です。これらの物語において、西王母は神々の母として、あるいは大いなる貴婦人として描かれています。

結論

西王母は、中国の文化や宗教において重要な役割を果たす女神であり、その信仰は長い歴史の中で変化しながらも、現在も多くの人々によって敬われています。彼女の存在は、中国の神話や信仰の深さを物語るものです。

もう一度検索