質量数

質量数とは

質量数（mass number）とは、原子核を構成する核子（陽子と中性子）の総数を指します。核種を区別する際に用いられ、通常は記号Aで表されます。原子核を構成する陽子と中性子の数は、原子の特性を決定する重要な要素であり、質量数は、その原子核の基本的な特徴を表す数値です。

質量数の表記

質量数は、元素記号の左肩に記述されます。例えば、質量数が12の炭素は、¹²Cと表記されます。この表記法は、同位体を区別する際に特に有効です。同位体とは、原子番号（陽子数）は同じでも、質量数が異なる原子のことです。

同位体、同重体、同中性子体

• - 同位体: 原子番号は同じだが、質量数が異なる原子のこと。中性子数が異なることで生じます。
• - 同重体: 質量数は同じだが、原子番号（陽子数）が異なる原子のこと。
• - 同中性子体: 中性子数は同じだが、原子番号が異なる原子のこと。

質量数と原子核の質量

質量数は、あくまで核子の数であり、原子核自体の質量とは異なります。しかし、質量数は原子量（相対原子質量）とほぼ等しく、実際の計算では原子量の近似値として利用されることもあります。

質量過剰

ある中性原子の質量をmaとしたとき、質量過剰（mass excess）Δは、以下の式で定義されます。

Δ = ma - Amu

ここで、muは原子質量定数です。

パッキング・フラクション

核子1個あたりの質量過剰を統一原子質量単位（ダルトン、記号: Da）で表した値をパッキング・フラクション（packing fraction）といい、以下の式で定義されます。

f = (Δ/Da) / A

質量欠損

原子核の質量は、核子（陽子と中性子）の質量の合計よりもわずかに小さく、この差を質量欠損（mass defect）といいます。質量欠損は、以下の式で表されます。

B = Zmp + (A - Z)mn - ma

ここで、mpは陽子の質量、mnは中性子の質量、Zは原子番号です。

バインディング・フラクション

核子1個あたりの質量欠損をDaで表した値をバインディング・フラクション（binding fraction）といい、以下の式で定義されます。

b = (B/Da) / A

まとめ

質量数は、原子核を構成する核子の数を表す基本的な量であり、同位体の識別や原子核の構造を理解する上で非常に重要です。質量過剰、パッキング・フラクション、質量欠損、バインディング・フラクションといった関連概念を理解することで、原子核の安定性やエネルギーに関する理解を深めることができます。

参考文献

長倉三郎 ほか 編『岩波 理化学辞典』（第5版）岩波書店、1998年。ISBN 9784000800907。
B.ポッフ、K.リーツ、C.ショルツ、F.サッチャ 著、柴田利明 訳『素粒子・原子核物理入門』（改訂新版）丸善出版、2012年。ISBN 978-4-621-06134-3。
JIS Z 8000-10:2022「量及び単位－第10部：原子物理学及び核物理学」（日本産業標準調査会、経済産業省）

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