贋金

贋金（偽造貨幣）とは

贋金とは、不正に製造された貨幣のことです。一般的には、使用を目的として通貨を複製・偽造し、外見や機械での判別を困難にしたものを指します。紙幣の場合は特に偽札と呼ばれます。

贋金の歴史

贋金の歴史は、通貨の歴史とほぼ同じくらい長いと言われています。通貨が誕生するとすぐに、利益を求めて贋金を作る行為が現れました。

各国における贋金の事例

古代ローマ帝国: 東ローマ帝国のビザント金貨は、ヨーロッパ全域で流通しましたが、フランク王国などでは国家による偽造も行われました。また、イスラム帝国のディーナール金貨やディルハム銀貨も、ヨーロッパの君主たちによって偽造されました。
日本: 古くは私鋳銭と呼ばれ、大宝律令で処罰の対象とされました。江戸時代には、幕府による三貨体制確立後、銭貨の私鋳は贋金として禁止されました。幕末には、薩摩藩などが藩財政を潤すために贋金を作っていた例があります。日中戦争時には、登戸研究所で偽札が製造されました。
ドイツ: ナチスドイツは、イギリス経済を混乱させるために、ベルンハルト作戦と称してイギリスの偽紙幣を製造しました。
イギリス: ウェスト・ヨークシャーでは、17世紀に金細工師が偽造の罪で処刑されたり、古代ローマ時代の偽造コイン鋳型が発見されたりしています。

著名な偽造師

カール・ウィルヘルム・ベッカー（1772～1830）

ドイツのワイン卸商の息子でしたが、商才がなく、造幣局で金型彫刻の技術を学び、古代の金貨や銀貨を偽造しました。古銭らしさを出すための工夫も凝らしていましたが、利益は販売業者に奪われ、視力が衰えたことで金型製作を止めました。

ウィリアム・ブロックレイ（1822～1920）

アメリカ出身で、法学と電気化学を学びました。銀行で紙幣のポジを作り偽札を製造、その後、彫刻師と組んで精巧な偽札を作り、15年間に亘って偽札作りで成功を収めました。しかし、離婚問題を弁護士に相談したことで、捜査が入り、逮捕されます。その後、司法取引で訴追を免れましたが、再逮捕され、懲役を課せられました。

サミュエル・アラン・テイラー（1838～1913）

スコットランド出身で、ギャングとして活動。アメリカで切手の偽造を行い、自身の肖像画を描き入れることもありました。1893年に一度収監されますが、1905年まで偽造を続けていました。

フランソワ・フルニエ（1846～1917）

スイス出身のフランス人で、偽造切手を製造。当時は合法であり、国際展覧会で金メダルを取ることもありました。遺品はスイス郵趣連合に売却され、偽造を証明する印章が押されました。

ジャン・ド・スペラティ（1884～1957）

イタリア出身で、「切手偽造の帝王」と呼ばれました。偽造した切手を専門家に鑑定させ、証明書を発行させてオークションにかける手法で利益を得ていました。第二次世界大戦中には、ドイツ軍に捕まりましたが、偽物と自白して私財没収を逃れています。晩年には、視力低下を理由に引退を宣言しましたが、死後、切手の偽造を続けていたことが明らかになりました。

ラウル・ド・トゥアン（1890～1975）

ベルギー出身で、メキシコで切手の偽造を行い、アメリカで流通させていました。古い切手の消印やオーバープリントを偽造する手口は、メキシコでは違法でなかったため、米国の郵便当局もなかなか摘発できませんでした。

チャールズ・ブラック（1928～？）

イギリス出身で、機械製作の技師でした。中古車販売業に関わり、盗難車を販売した罪で収監されたことで偽造罪で服役中の囚人たちと知り合い、偽造に手を染めるようになります。最初はポンド札を偽造し、後に米ドル札の偽造も始めました。逮捕と釈放を繰り返しますが、最終的に懲役21年の刑を受けました。

贋金に関するその他の情報

通貨偽造の罪: 通貨偽造は重大な犯罪であり、各国で厳しく処罰されます。
私鋳銭: 日本では、朝廷が発行した貨幣以外の貨幣を指し、古くから処罰の対象でした。
スラッグ: 自動販売機などで誤認識させるために作られた偽造貨幣で、ワッシャーや他国の硬貨などが使われます。
スーパーノート: 精巧に偽造された紙幣のことで、国家が関与しているとも言われています。
* カレンシーデテクター: 紙幣識別機のことです。

まとめ

贋金は、歴史を通じて存在し続けている社会問題です。偽造の手口は時代と共に変化していますが、その目的は常に利益の追求にあります。贋金を見抜くための技術も進化していますが、偽造を完全に防ぐことは難しいのが現状です。

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