ディルハム

ディルハム（dirham、アラビア文字：درهم）は、モロッコとアラブ首長国連邦 (UAE) で使用されている通貨単位であり、通貨記号はDHです。

また、ディナールやリアルの補助通貨単位としても用いられています。

モロッコ・ディルハム

モロッコで使用されるディルハムは、モロッコ経済の中核を担う通貨として、日々の取引や経済活動に不可欠な役割を果たしています。

UAEディルハム (AED)

アラブ首長国連邦（UAE）で使用されるディルハム（AED）は、石油輸出に大きく依存するUAE経済を支える重要な通貨です。UAEの経済成長と共に、その価値と重要性は増しています。

歴史

ディルハムという名称は、サーサーン朝ペルシアで鋳造されたディレム銀貨に由来します。このディレム銀貨の起源は、アレクサンダー大王の東征によって広まったギリシアの通貨ドラクマにまで遡ることができます。

7世紀にイスラーム教が勃興し、イラン、シリア、エジプトなどがイスラーム帝国の支配下に入りました。旧サーサーン朝の地域では、従来のサーサーン朝のディレム銀貨が引き続き使用され、旧東ローマ帝国の領土（シリアやエジプトなど）では、ノミスマ金貨が流通していました。旧サーサーン朝地域で流通していた銀貨は、ディルハム銀貨と呼ばれていました。

693年には、ウマイヤ朝のカリフ・アブドゥルマリクのもとで、イスラーム国家としての独自性を持ったディルハム銀貨やディナール金貨が鋳造されました。8世紀半ばに成立したアッバース朝では、その広大な領土の各地で銀貨と金貨が併用されるようになりました。

銀の主な産地は、マー・ワラー・アンナフル（中央アジア）、アフガニスタン、東部ペルシャでした。10世紀から11世紀にかけて、豊富な銀の産地を支配下に置いたサーマーン朝の対ガズナ朝交易により、大量の銀がインドに流出しました。このため、イスラーム世界では銀が不足し、質の悪いディルハム銀貨が流通するようになりました。しかし、12世紀から13世紀には中央アジアからの銀の供給が回復し、ディルハム銀貨はディナール金貨に代わる主要な通貨として再び重要な役割を果たすようになりました。

モンゴル帝国のイルハン朝では、ディルハムの4倍もの重さの銀貨が鋳造され、ディナール銀貨と呼ばれました。しかし、14世紀以降、エジプトやシリアでは銀貨の鋳造が減少し、ファルス銅貨が銀貨の代わりとして使われるようになりました。

このように、ディルハムは古代から現代に至るまで、その形を変えながらも重要な通貨単位として存続し、各国の経済や歴史と深く結びついてきました。

関連項目

* ディナール：中東諸国で広く使用されている通貨単位です。その起源は古代ローマのデナリウス銀貨に遡ります。

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