赤尾好夫

赤尾好夫：教育とメディアのパイオニア

赤尾好夫（1907-1985）は、日本の出版界、放送界にその名を刻んだ、影響力のある人物です。山梨県出身の彼は、東京外国語学校イタリア語科卒業後、1931年に旺文社の前身となる歐文社を設立。旺文社はその後、日本を代表する出版社へと成長を遂げ、その礎を築いたのが赤尾好夫でした。

彼の功績は出版事業にとどまりません。文化放送やテレビ朝日の設立にも深く関与し、放送大学設立にも貢献するなど、日本の放送メディアの発展にも大きく寄与しました。さらに、実用英語技能検定（英検）の創設にも携わり、教育と情報の融合を目指した活動は、現代の教育にも影響を与え続けています。

赤尾好夫は教育界への貢献が広く認められ、文部大臣賞をはじめ、数々の栄誉ある賞を受賞しました。1959年には社会教育功労者として表彰され、その功績は社会教育の発展にも寄与したと評価されています。紺綬褒章、藍綬褒章、勲二等旭日重光章など、数々の勲章を授与され、その功績は国家レベルでも高く評価されています。さらに、ローマ法皇ヨハネ・パウロ2世より銀大勲章付大聖グレゴリオ市民二等騎士章を授与されるなど、国際的な評価も受けています。

旺文社における功績だけでなく、赤尾好夫は多方面で才能を発揮しました。趣味として書画骨董を収集し、そのコレクションは財団法人センチュリー文化財団に収蔵されています。また、彼は優れた射撃の腕前で知られ、全日本選手権優勝、世界選手権銀メダル獲得の実績を持つなど、スポーツマンとしても成功を収めています。長年にわたり社団法人全日本狩猟倶楽部の会長も務め、多様な分野でリーダーシップを発揮しました。

しかし、赤尾好夫の生涯は順風満帆ではありませんでした。戦時中には戦意高揚に関与したとして、戦後、公職追放の処分を受けています。音楽評論家の志鳥栄八郎は、赤尾好夫の政治的立場について言及しており、彼の複雑な経歴の一端を垣間見ることができます。

旺文社の発展に大きく貢献した赤尾好夫は、その事業を子息である赤尾一夫（2代目社長）、赤尾文夫（3代目社長、現会長）へと引き継ぎました。彼の功績は旺文社という企業の形だけでなく、日本の教育とメディアの風景を大きく変えた、歴史的な出来事として記憶されています。

赤尾好夫の著作には、『英語の綜合的研究』（通称「英綜」）、『英語基本単語集』（通称「赤尾の豆単」）などがあり、長年にわたって多くの学習者に利用され、現在も旺文社の代表的な書籍として親しまれています。これらの教科書は、彼の教育への情熱を伝える貴重な資料と言えるでしょう。

赤尾好夫は、単なる出版人、放送人としてだけでなく、教育者、スポーツマン、そしてコレクターとしても、多様な才能と情熱で人生を駆け抜けた、稀有な存在だったと言えるでしょう。彼の功績は、日本の教育とメディアの発展に多大な影響を与え続け、これからも多くの人の記憶に刻まれることでしょう。

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