赤松教康

赤松教康の生涯と伝説

赤松教康（あかまつ のりやす）は、室町時代中期に活躍した著名な武将であり、赤松満祐の子として知られています。元服の際、彼は第6代将軍・足利義教から偏諱を受け、「教康」と名乗るようになりました。教康の運命は、1441年の嘉吉元年に起こった義教暗殺事件と密接に結びついています。

嘉吉の乱と義教の暗殺

嘉吉元年の6月24日、教康は父・満祐や叔父の則繁と共に、足利義教の命を奪う暗殺の計画に関与しました。これが「嘉吉の乱」と呼ばれる事件で、教康は中心的な役割を果たしました。この事件後、彼らは播磨へ帰国し、反乱の余波の中で生活を営むこととなります。

その後、赤松氏は、山名宗全や細川持常からなる幕府軍による追討を受けることになりました。教康は赤松軍を指揮し、8月24日に和坂で持常率いる幕府軍を撃破しました。さらに、翌日の8月25日には、細川軍も敗北へと追い込みました。彼は武将としての名声を高めていきましたが、戦況は急変します。

8月26日には但馬方面から山名軍が播磨に侵入し、赤松軍は坂本に撤退を余儀なくされます。この際、前日に降った雨によって増水した加古川を渡ることが困難となり、多くの将兵が命を落としてしまいます。その中で教康も溺死したとの噂が立つものの、彼はなんとか生き延びて城山城に籠もります。

城の攻撃と教康の逃亡

赤松家の居城、城山城は山名軍による総攻撃を受けます。その結果、父・満祐は9月10日に自ら命を絶ち、教康はやむを得ず赤松氏の存続のために脱出する決断を下しました。彼は17名の供回りと共に西南の方角から逃れ、室津から艦に乗り込み、妻の従兄である北畠教具のもとへ向かいました。

しかし、北畠教具は教康を匿うことを拒否し、教康は絶望の中で9月28日に自ら命を絶ちました。享年わずか19歳の若さでした。その後、彼の首は京都に送られ、幕府によって公開されることとなります。しかし、彼が生き残ったという説も存在しています。

生存説と子孫の伝承

薩摩の島津家の資料によると、教康は父の死後、日向の志布志へ忍び降り、その後も生き延びて松山中島に隠れていたとされています。この場合、彼の曾孫は赤松肥前守義季と名乗り、島津義久に仕官したことが記録されています。この伝承が真実であれば、満祐、教康の直系子孫は少なくとも16世紀半ばまで存続したと考えられ、教康の願いであった赤松氏存続が結果的に実現したことになります。

辞世の歌

教康は死の直前に二首の辞世の歌を詠みました。これは彼の心情を表す深い内容となっています。
「頼む木の　陰に嵐の　吹きくれば　春の緑も　散果てにけり」
「うきことのまさりもやせん世にすまはいのちのありてなにゝかはせん」
これらの歌からは、彼の悲哀と無常観を感じ取ることができます。

教康の波乱に満ちた生涯とその耳目を引く伝説は、今もなお人々の心に残り続けています。

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