赤穂浪士 (映画)

東映オールスターキャストが彩る時代劇巨編『赤穂浪士』(1961)

1961年3月28日、東映創立記念日に公開された『赤穂浪士』は、東映が誇る豪華俳優陣を結集した時代劇大作です。監督を務めたのは松田定次、主演は片岡千恵蔵と、東映を代表するスタッフ、キャスト陣が結集しました。カラー映画、東映スコープ、上映時間150分というスケール感も、当時の観客を圧倒したに違いありません。

東映における忠臣蔵映画の歴史と本作の位置付け

本作は、東映にとって10周年記念映画というだけでなく、忠臣蔵を題材とした映画製作においても重要な位置を占めています。東映は、1956年に『赤穂浪士 天の巻 地の巻』、1959年に『忠臣蔵 櫻花の巻・菊花の巻』と、すでに2本のオールスターキャストによる忠臣蔵映画を製作しており、本作はその3作目にあたります。わずか5年の間に3作品もの忠臣蔵映画を製作した東映の意気込みと、この時代における忠臣蔵人気を窺い知ることができます。その後、東映が製作した忠臣蔵映画は1978年の『赤穂城断絶』まで途絶えることになります。そのため、本作は東映の忠臣蔵映画史において、重要な転換期を象徴する作品と言えるでしょう。

さらに、本作は、大佛次郎原作による『赤穂浪士』の二度目の映画化作品でもあります。そして、この映画の3年後にはNHKで同名の大河ドラマが放送されるなど、社会現象にも発展するほどの大きな影響力を持っていました。

豪華俳優陣による見応えのある演技

本作のキャスト陣は、まさに東映を代表するスター俳優たちの競演です。大石内蔵助を演じるのは、1959年製作の『忠臣蔵 櫻花の巻・菊花の巻』に続き、片岡千恵蔵。その存在感と演技力は、多くの観客を惹きつけました。一方、吉良上野介役には、1956年製作の『赤穂浪士 天の巻 地の巻』に続いて月形龍之介が起用され、その悪役ぶりは、観客に強い印象を与えたことでしょう。

浅野内匠頭役には大川橋蔵が抜擢され、さらに『忠臣蔵 櫻花の巻・菊花の巻』で浅野内匠頭を演じた中村錦之助は、本作では脇坂淡路守を演じています。この配役からも、当時の東映における俳優陣の層の厚さと、役者たちの高い演技力が伺えます。また、前回の『赤穂浪士 天の巻 地の巻』で浅野内匠頭を演じた東千代之介は堀部安兵衛役、同作品で大石内蔵助を演じた市川右太衛門は千坂兵部役と、過去の作品との関連性も楽しめます。

興行的な成功と社会への影響

『赤穂浪士』は、その豪華なキャストとスケール感、そして時代劇としての完成度の高さから、大ヒットを記録しました。配給収入は4億3500万円に達し、1961年度の邦画配収ランキングで第2位を獲得するなど、興行的にも大きな成功を収めました。これは、当時の観客がいかに本作に熱狂したかを示す証と言えるでしょう。

本作は、単なる娯楽作品にとどまらず、大佛次郎原作の二度目の映画化、そして後のNHK大河ドラマにも繋がったという意味で、日本の映画史、そして忠臣蔵史においても重要な位置を占める作品となっています。時代劇ファンのみならず、日本の映画史に関心のある方にとっても、必見の作品と言えるでしょう。

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