起承転結 IV

『起承転結 IV』

松山千春のディスコグラフィーにおいて、通算5枚目となるベスト・アルバム、そしてシングル・コレクションとしては4作目にあたる『起承転結 IV』（きしょうてんけつ フォー）は、1987年10月25日にファンの手に届けられました。この作品は、彼のキャリアにおいて1984年から1987年という、一つの重要な時期に発表されたシングル曲を網羅した集大成として位置づけられています。タイトルの「起承転結」は、彼の音楽人生における区切りや流れを示すシリーズ名であり、本作はその第4弾として、彼の楽曲制作の一端を示すものとなっています。

収録内容

本作には、1984年にリリースされたシングル「男と女」から、1987年の「七つちがい」までの間に発表された6枚のシングルから、そのA面曲とB面曲（カップリング曲）すべて、合計12曲が収められています。この時代の彼の音楽性の変遷や多様性を一覧できる構成となっています。例えば、「男と女」、「七つちがい」の間に発表されたシングルには、「愛」、「燃える涙」、「旅立ち」、「もう一度」、「季節の出来事」といった楽曲が含まれており、これら全てのA面およびB面が収録されています。それぞれのシングルA面曲はもちろんのこと、通常アルバムには収録されにくいB面曲も網羅されている点が、シングル・コレクションとしての価値を高めています。当時のヒット曲から隠れた名曲まで、幅広い楽曲が収録されており、リアルタイムで彼の活動を追っていたファンはもちろん、後から彼の音楽に触れたリスナーにとっても、この時期の代表曲を手軽に楽しめる一枚となっています。

リリース形態と再販

『起承転結 IV』は、当時の主要メディアであったコンパクトディスク（CD）とアナログレコード（LP）の2形態で同時に市場へ投入されました。これは、デジタルメディアへの移行期にあった当時の音楽市場の状況を反映しています。発表から数年を経た1992年には、このアルバムのCD版が日本コロムビアから改めてリリースされており、現在でも比較的手に入りやすい形で提供されています。このように、メディアの変化に対応しながらも、長くファンに愛され続けている作品です。当時の音源を最新のデジタル技術でリマスターされたかは明確な情報がないものの、彼の代表的な音源として様々な媒体で親しまれています。

シリーズの一環として

「起承転結」シリーズは、松山千春がこれまでに発表してきたシングル楽曲を時系列に沿って集めた、彼の代表的なベスト・アルバムシリーズです。本作はその第4弾にあたり、これまでのシリーズと同様に、特定の期間のシングルリリースを俯瞰できる構成となっています。このシリーズを通して聴くことで、シンガーソングライターとしての彼の創作活動の流れや、その時々の音楽的なアプローチの変化を、一連の作品として感じ取ることができます。『起承転結 IV』は、その中でも特に1980年代中盤から後半にかけての彼の活動を象徴するアルバムと言えるでしょう。このシリーズが継続してリリースされていること自体が、松山千春が常に第一線で活躍し続けている証とも言えます。

参加ミュージシャン

本作の制作には、当時の日本の音楽シーンを支えた一流のセッションミュージシャンたちが多数参加し、楽曲に深みを与えています。例えば、ドラムには見砂和照氏や岡本郭男氏、エレキギターには松原正樹氏、芳野藤丸氏、角田順氏、アコースティックギターには笛吹利明氏、丸山政幸氏、エレキベースには長岡道夫氏、渡辺直樹氏、渡辺茂氏、キーボードには奥慶一氏、中西康晴氏、倉田信雄氏、有坂秀一氏、林政宏氏、パーカッションには浜口茂外也氏、斉藤ノブ氏、そしてストリングスにはMASA SHINOZAKI GROUPやKATOH JOE GROUPといった、いずれも第一線で活躍するプレイヤーやグループが名を連ねています。彼らの卓越した演奏スキルが、松山千春のメロディーと歌詞を見事に引き立て、アルバム全体の完成度を高めています。アコースティックサウンドを基調としながらも、時にダイナミックなバンドサウンドや美しいストリングスアレンジが加わることで、楽曲ごとの世界観が豊かに表現されています。

『起承転結 IV』は、単なるシングル集に留まらず、当時の松山千春の音楽世界を理解する上で欠かせない作品です。彼のファンはもちろんのこと、日本のフォーク・ニューミュージックに関心のある方にとっても、聴きごたえのあるアルバムと言えるでしょう。

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