越北

越北（えつほく、月北）

越北とは、朝鮮民主主義人民共和国、いわゆる北朝鮮の体制に賛同し、大韓民国を離れて北緯38度線を越えて北朝鮮に入ることを指します。日本語では越北と表現されるこの行動は、「入北」または「脱南」とも呼ばれ、北朝鮮側ではその行為が美化され「義挙入北」と表現されます。

一方、韓国から北朝鮮へ逃げる行為は「越南帰順」あるいは「脱北」と称されますが、厳密には脱北は北朝鮮から逃れる行動であり、韓国に渡ることに限定されません。特に1945年の日本の敗戦により、北緯38度線が二分され、南側はアメリカの統治を受け、北側はソ連に影響を受けつつ北朝鮮が形成されました。

越北の歴史的背景

1945年から1953年までの朝鮮戦争の間、北緯38度線を越えて北朝鮮に入る動きは少なくありませんでした。多くの政治家や独立運動家が統一国家の樹立を目指して活動しており、中には平壌に留まって北朝鮮政府の樹立に関与した者も存在しました。

また、朝鮮戦争中に南北の勢力が激しく変化する中で、越北の試みも行われました。戦争が終結した後、李承晩政権の反共主義から逃れようとする知識人や活動家が越北を選ぶことがありましたが、彼らの多くが北朝鮮建国後の政治闘争の中で粛清されました。

越北者の社会的立場

越北者の扱いは厳しく、北朝鮮の身分制度によって「動揺階層」または「敵対階層」とみなされ、非常に厳格な監視の対象となります。特に1945年8月15日以前に入北した者を除き、彼らは基本的に主要都市への居住すら許可されないことが一般的です。

越北後、平壌に住むことが許される場合、越北者同士が集まりやすい環境を避けるため、彼らは北朝鮮の中産階級に分散されて住むことが求められます。就職の場では、韓国出身者が研究機関や諜報機関での仕事に従事する機会が多いですが、給料は非常に低く、基本的な生活は困難とされます。しかし、国家による特別な配給が承認されることで、多少の生活は保障されることもあります。

越北者の監視と制限

越北者の日常は常に監視され、彼らの不満の表明は時に取り返しのつかない結果をもたらすこともあります。過去には邊境を越えて外国に逃れようとした越北者もいましたが、その結果により以降の越北者の国外渡航は禁止されました。

加えて、越北者に関連する事件や個々の行動は、北朝鮮政府の目に非常に敏感に映り、特に高位指導者との接触に関しては厳しい制約が設けられています。

結論

越北は、単に一人の個人の選択による行為ではなく、歴史的背景や社会制度、政治的環境が複雑に絡み合った結果として存在しています。北朝鮮に入ることで何が待っているのか、そしてその選択がもたらす影響は、越北者自身にも多大な影響を与えることとなります。

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