越木岩神社

越木岩神社について

越木岩神社（こしきいわじんじゃ）は、兵庫県西宮市甑岩町に位置する神社で、延喜式神名帳に記載された大国主西神社の後身と伝えられています。この神社は、女性守護、子宝、安産、そして商売繁盛にご利益があるとされ、多くの参拝者が訪れます。

歴史と概要

神社の本殿には、明暦2年（1656年）に円満寺の僧侶・教順が西宮神社から勧請した蛭子大神（ひるこおおかみ、えびす神）が祀られています。この勧請は、地域の発展を願って行われたと考えられていますが、元々は当地の「甑岩」をはじめとする磐座を祀る自然崇拝が中心でした。特に、「甑岩」は、北山や六甲山を霊場とする磐座・磐境祭祀のランドマークとして、古代から信仰の対象であったとされています。

甑岩の伝説

この地は御影石（花崗岩）の産地としても有名で、大坂城築城の際、石工が甑岩を割ろうとしたところ、割れ目から鶏の鳴き声が響き、白煙が立ち昇り、熱気を帯びて吹き出したという伝説があります。この熱気は不思議な力を持っており、石工たちは手足を震わせ、苦しみ悶え、作業を断念したと伝えられています。また、徳川氏による大阪城修築の際には、池田備中守長幸の家紋が刻まれた石の破片が残されており、この地の歴史を物語っています。（西宮ふるさと民話「こしき岩のいかり」より）

境内と社叢林

約7700平方メートルの境内には、豊かな自然が残されており、1974年には「越木岩神社社叢林」として兵庫県指定天然記念物および西宮市景観保護樹林に指定されました。この社叢林は、ヒメユズリハを主要構成種とする樹林で、モッコク、クロバイ、ヤマモモなどの高木、ヤブツバキ、アラカシ、ネズミモチなどの中低木が生い茂っています。このような暖帯林が洪積台地上に発達し、特にヒメユズリハが優占する樹林は、県下でも数少ない貴重な存在として学術的価値も非常に高いとされています。

祭神と境内社

本殿祭神:
蛭子大神

境内社:
岩社：市杵島姫大神
六甲山神社：菊理姫大神（六甲山神社の里宮）
雨乞社：貴船大神・龍神
土社：大地主大神
水神社：ミズハノメノカミ
不動明王社：甑不動明王
伊勢遥拝社：天照大神
稲荷社：白玉稲荷・大崎稲荷（秀吉大神）

境外末社:
苦楽園神社
石宝殿
巨石

甑岩と磐座

越木岩神社は、境内に鎮座する磐座を中心に、北山にある磐座群を「甑岩」を通して遥拝するために建立されたと考えられています。「甑岩」は、周囲約40メートル、高さ10メートルの花崗岩で、酒米を蒸す際に使用する「甑（こしき）」に似ていることから名付けられました。この岩は、古代から霊岩として崇められており、岩社として祀られています。また、岩上には雑木が生い茂り、この姿が社名・町名の由来ともなっています。摂津名所絵図や摂津史には、「甑岩神祠は甑岩村にあり祭神巨岩にして倚畳甑の如し、此地の産土神とす」と記されており、その霊験の高さが伺えます。厳島神社の分霊も祀られています。

甑岩は上部が中央から二つに割れており、その頂上から樹木が生えています。この形状から陰石（女性器石）と見なされ、女性守護の神として厳島神社が祀られている理由の一つとされています。

甑岩から北へ約50メートル登ると、第二の磐座（周囲約80メートル）、さらに約30メートル登ると第三の磐座があります。これらの磐座はそれぞれ南座、中座、北座と呼ばれ、北座は生田神社と同じ稚日女尊の磐座ともされています。また、南座・中座・北座を、陰石・陰石・陽石とする説も存在します。さらに北の延長線上には標高約200メートルの北山があり、そこにも巨石や磐座群が点在しています。これらの磐座は、三輪山中の磐座と比較され、その類似性が指摘されています。

磐座の保護活動

神社の北東側には社叢林があり、長らく地域の共同所有でしたが、約50年前に夙川学院に売却されました。夙川学院は磐座に配慮して短期大学を建設し、磐座の保存と伊勢神宮遥拝所を遮らないように配慮しましたが、経営トラブルによりポートアイランドへ移転。その後、土地は不動産業者に売却され、業者による磐座の破壊や遥拝所への建物の建設が計画されたため、神社側は磐座の保存を求めています。

脚注

関連事項

稚日女尊
六甲山神社

外部リンク

越木岩神社（公式サイト）
越木岩神社ブログ

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