趙汝愚

趙汝愚（ちょう じょぐ）は、南宋時代の政治家であり、宗室の一員でした。紹興10年（1140年）に生まれ、慶元2年1月20日（1196年2月20日）に亡くなりました。字（あざな）は子直（しちょく）と称しました。

彼は、北宋の太宗の長男であり、真宗の同母兄であった趙元佐の末裔にあたります。趙汝愚は、智略と勇気を兼ね備えた人物として知られ、内政面でも軍事面でも数々の功績を挙げ、当時の皇帝であった孝宗から非常に厚い信頼を受けていました。

しかし、紹熙5年（1194年）に孝宗が崩御すると、後を継いだ光宗との関係が悪化しました。趙汝愚は、太皇太后呉氏（高宗の皇后）と協力し、光宗を退位させるという行動に出ました。その後、寧宗が即位すると、趙汝愚は慶元元年（1195年）に右丞相に任命され、政治の中枢で活躍しました。

しかし、趙汝愚は、同じく朝廷で権勢を振るっていた韓侂冑（かん たくちゅう）と対立するようになります。韓侂冑は、寧宗に対して趙汝愚に関する讒言（ざんげん）を行い、それを信じた寧宗によって、趙汝愚は官位を剥奪され、福州へと流罪に処されることとなりました。その後も韓侂冑からの圧迫は続き、趙汝愚はさらに永州への流罪を命じられますが、その途上、古酃（こりょう）という場所で病死しました。

趙汝愚と韓侂冑の対立の背景には、思想的な対立があったとされています。韓侂冑は、朱熹（しゅき）の学問、すなわち宋明理学を偽学として弾圧しましたが、趙汝愚は朱熹を擁護しました。そのため、韓侂冑は趙汝愚を政敵として排斥しようとしたと言われています。

趙汝愚の死から11年後の開禧3年（1207年）に、韓侂冑が暗殺される事件が起こりました。これを受けて、趙汝愚は太師・周王という位を追贈され、名誉が回復されました。彼の生涯は、政治的な陰謀と対立に翻弄されたものでしたが、死後には正当な評価が与えられたのです。

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