足助陣屋

足助陣屋（あすけじんや）

概要

足助陣屋は、江戸時代に三河国加茂郡足助（現在の愛知県豊田市足助町）に存在した、旗本本多氏の陣屋です。その歴史は、慶安2年（1649年）に本多忠義の五男である本多忠周が、越後国村上藩から陸奥国白河藩へ加増移封されたことに端を発します。忠周は天和元年（1681年）に三河国加茂郡で5千石を分与され、この地に陣屋を築きました。

その後、5代将軍徳川綱吉の治世下で、忠周は丹波国で2千石の加増を受け、さらに天和3年（1683年）には寺社奉行に任じられ3千石が加増されました。これにより、石高1万石となり諸侯に列し、足助藩が立藩しました。しかし、貞享4年（1687年）に忠周は同じく寺社奉行であった相模国深見藩主坂本重治とともに、将軍綱吉から職務怠慢を理由に奉行職を免ぜられます。さらに、元禄2年（1689年）6月には加増分の3千石が没収されたため、足助藩は廃藩となり、忠周は7千石の交代寄合旗本として再び江戸時代を過ごすことになりました。

陣屋の構造

陣屋の構造は、表門を入ると左手に地方（じかた：民政を担当する役所）、右手に役所、その奥に居館が配置されていました。また、敷地の左奥には稲荷社が祀られていました。

明治時代以降

明治維新後、陣屋の建物は明治2年（1869年）から明治4年（1871年）まで伊那郡足助庁として使用されました。その後、明治16年（1883年）には東加茂郡役所が新築されました。さらに時代が下り、愛知県足助農林振興センターとして利用されましたが、これも取り壊されました。2023年（令和5年）現在、陣屋跡は更地となっており、当時の遺構は何も残っていません。敷地の入口には、陣屋の説明と見取図を記した看板が立てられているのみです。

足助陣屋は、その短い藩としての歴史と、その後、郡役所や農林振興センターとして利用された歴史を経て、現在はその姿を失っています。しかし、その跡地は、かつてこの地に存在した陣屋の歴史を静かに語り続けています。

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