足摺型給油艦

足摺型給油艦

足摺型給油艦（あしずりがたきゅうゆかん）は、日本海軍に所属する給油艦の一形式で、主に航空母艦へ航空機用の軽質油を供給する役割を担っていました。この艦型は昭和15年度（1940年）の計画に基づき、昭和16年度の艦艇製造費で建造されたもので、計画された8,000トン型の給油艦に分類されます。

概要

足摺型給油艦は、航空母艦が展開する海域で必要な燃料や物資を迅速に供給できるよう設計されており、実際の建造においては「洲埼」に続くものでした。特に本型の給油艦は、補給品の搭載能力が約2倍に拡大されており、大型の空母2隻に航空機用のガソリンを同時に供給できるだけの能力を持っています。

設計段階では、主に軽質油の輸送が目的とされていましたが、最終的には爆弾や魚雷、さらに糧食や真水といった多様な補給物資も搭載可能な艦型に進化しました。このため、軍艦に近い形式となっており、艦内部には軽質油タンクが全溶接構造で設置されています。万一の漏洩に備え、周囲には空隙が設けられ、バラストタンクも兼ねた構造となっています。

また、前方のマストや後方の甲板上には、18トンの浮船を2基搭載するためのクレーンも装備され、給油作業の効率を上げる工夫が施されています。艦の後部には潤滑油庫が設けられ、必要な潤滑油の保管や供給も行われました。飛行機部品用の格納庫や補給用の弾薬庫も設置され、これらの積み卸しには5トンのデリックが4基使用されました。

建造と運用

足摺型は三菱重工業の長崎造船所で二隻が建造され、1943年にそれぞれ竣工しました。この2隻は「足摺」と「塩屋」と名付けられ、運送艦及び給油艦として任務に就きました。両艦は南方地域からのガソリン輸送任務にあたり、シンガポールやバリックパパンを経由して内地やサイパンといった場所へ往復しました。

しかし、運用開始から間もなくして両艦はともに1944年に戦没し、実際の給油任務としての役割を果たすことはありませんでした。具体的には、足摺は1944年6月5日、塩屋は同年6月8日にアメリカ海軍の潜水艦によって沈没しています。

このように、足摺型給油艦は、計画的には航空母艦の支援を行うために設計されていたにも関わらず、戦争の激化とともにその運用の機会を失ってしまった艦艇でした。日本海軍にとって、重要な物資補給の役割を担う艦艇として期待されながらも、様々な要因でその使命を全うできなかった点は、歴史の一つの教訓として残っています。

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