足立巻一

足立巻一（1913年6月29日 - 1985年8月14日）は、昭和期の日本文学界において、小説家、詩人、エッセイストとして多彩な足跡を残しました。大阪芸術大学教授を務めた教育者でもあります。彼の業績は、文学作品のみならず、本居宣長研究や児童詩運動への貢献など、多岐にわたります。

東京市神田区に生まれた足立は、幼少期に両親との死別を経験し、祖父母や叔父に育てられるという複雑な家庭環境で育ちました。幼い頃から文学に親しみ、「少年倶楽部」や「赤い鳥」といった雑誌に詩歌や短文を投稿していました。関西学院中等部では、歌人の池部宗七から短歌の手ほどきを受け、文学への造詣を深めました。

神宮皇學館（現皇學館大学）では本居春庭を知り、研究を始めました。卒業後は高校教諭を経て、新大阪新聞社に勤務し、学芸部長、社会部長などを歴任しました。ジャーナリストとしての活動と並行して、井上靖とともに児童詩誌『きりん』の創刊に携わり、児童詩運動に力を注ぎました。1956年に新聞社を退職してからは、作家としての活動に専念します。

毎日放送の長寿番組『真珠の小箱』の構成に参加し、自らも出演するなど、メディアを通じた文化啓蒙活動にも貢献しました。また、立川文庫の研究にも取り組み、大衆文学研究会にも参加するなど、幅広い分野で活躍しました。

1977年には大阪芸術大学芸術学部文芸学科教授、1980年には神戸女子大学文学部国文学科教授に就任し、後進の育成にも力を注ぎました。

足立の代表作として知られる『やちまた』は、盲目の国学者・本居春庭の生涯を描いた評伝文学の傑作であり、芸術選奨文部大臣賞を受賞しています。その他、『虹滅記』で日本エッセイスト・クラブ賞、『雑歌』で日本[[詩人クラブ賞]]を受賞するなど、数々の賞に輝きました。

1984年には鈴屋学会の設立に参加し、本居宣長研究の発展に尽力しました。翌年、その学会で講演を行った後、生涯を閉じました。

足立巻一は、激動の時代を生き抜きながら、文学、教育、文化活動を通じて社会に貢献した人物として、記憶されるべきでしょう。彼の作品は、今もなお多くの読者に愛され、読み継がれています。また、児童詩運動や本居宣長研究における足立の功績は、後世に大きな影響を与え続けています。

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