鈴屋学会

鈴屋学会

鈴屋学会は、本居宣長およびその周辺の研究、さらに国学研究の発展と研究者間の交流を目的として1984年に設立された日本の学術研究団体です。事務局は本居宣長記念館に置かれています。

概要

本学会は、単独学会として学術研究活動を行っており、2007年4月には日本学術会議協力学術研究団体の指定を受けています。

沿革

設立の背景

本居宣長の地元である三重県松阪市では、宣長への敬意が深く、その顕彰活動は非常に盛んでした。没後100年を迎えた1901年には、市を挙げて「本居宣長翁百年祭」が開催されました。また、1909年には宣長の旧宅が松坂城二の丸跡地に移築・復元され、1931年には山室山神社が「本居神社」と改称されました。1970年には、長年本居家に保管されていた宣長関連資料が松阪市に寄贈され、旧宅に隣接して本居宣長記念館が開館しました。

学会設立の機運

このような状況下で、研究の場としての「学会」設立への期待が高まりました。岡本勝氏らの「国学懇話会」と鈴木淳氏らの「鈴門研究会」が1982年の合同研究会で具体化し、1983年に「鈴屋学会準備委員会」が結成され、関係方面への呼びかけが行われました。その結果、わずか1、2ヶ月の間に100人を超える入会者があり、その専門分野も国語学、国文学、歴史学、民俗学、宗教学、神話学、倫理学、思想史など多岐にわたりました。これは、宣長の学問の広さを反映するとともに、学会への期待の多様性と大きさを物語るものでした。

学会発足

1984年12月15日と16日には、本居宣長記念館で発会式を兼ねた第1回大会が開催されました。

活動・事業

学術大会の開催

1984年12月の発会式以降、「鈴屋学会大会」として年1回の頻度で開催されています。大会では、公開講演と研究発表が行われています。松阪市教育委員会が後援しています。第2回から第6回までは11月に開催されていましたが、第7回以降は4月開催となっています。

学会誌の発行

1985年から、査読付き論文を含む学術雑誌『鈴屋学会報』が年1回発行されています。これは国学に関するほぼ唯一の専門学会誌ですが、本文の表記が現代仮名遣いであることに対して批判的な意見もあります。学会報は無料で購読できます。

公開講座の開講

1990年から、宣長の全貌を市民に広く知ってもらうことを目的とした講座「宣長十講」が開講されています。松阪市教育委員会が後援しており、年10回の講座を通して、学会員を中心に講師を招き、最新の研究成果や宣長の生涯、業績、そして宣長を育んだ松阪の文化について講義しています。

参考文献

田中康二『国学史再考：のぞきからくり本居宣長』新典社〈新典社選書〉、2012年1月。ISBN 978-4-7879-6797-8。
本居宣長記念館 編『本居宣長事典』東京堂出版、2001年12月。ISBN 4-490-10571-1。
鈴屋遺蹟保存会本居宣長記念館 編『本居宣長年表：(稿)』本居宣長記念館、2018年3月。
鈴屋遺蹟保存会本居宣長記念館 編『本居宣長の不思議』（令和版）鈴屋遺蹟保存会本居宣長記念館、2022年6月。
中澤伸弘「鈴屋學會と假名遣」『國語國字』第195号、國語問題協議會、2011年7月、63-66頁。
田中康二「〈書評〉國學院大學日本文化研究所編『歴史で読む国学』」『鈴屋学会報』第39号、鈴屋学会、2022年12月、65-72頁。
「鈴屋学会のあゆみ」『鈴屋学会報』第11号、鈴屋学会、1994年12月、104-92頁。

関連文献

足立巻一『やちまた』上・下、河出書房新社、1974年10月。
岩田隆『宣長学論攷：本居宣長とその周辺』桜楓社、1988年1月。
川崎市市民ミュージアム、四日市市立博物館、本居宣長記念館、朝日新聞社事業本部大阪企画事業部編『21世紀の本居宣長』朝日新聞社、2004年9月。
中澤伸弘『やさしく読む国学』戎光祥出版、2006年11月。ISBN 4-900901-70-9
田中康二『本居宣長の大東亜戦争』ぺりかん社、2009年8月。ISBN 978-4-8315-1242-0
國學院大學日本文化研究所編『歴史で読む国学』ぺりかん社、2022年3月。ISBN 978-4-8315-1611-4

関連項目

日本近世史
日本の近世文学史
日本近世文学会

外部リンク

* 本居宣長記念館

もう一度検索