跡部昌忠

跡部昌忠は、戦国時代から江戸時代初期にかけて活躍した武将で、その生涯は武田氏と徳川氏という二つの有力な戦国大名に仕えたことに特徴づけられます。天文13年（1544年）に跡部勝忠の長男として誕生し、武田氏家臣としてそのキャリアをスタートさせました。

武田家では、武田勝頼に仕え、使番12人衆や近習番頭といった要職を歴任しました。これらの役職は、主君の側近として、機密情報を扱い、戦場での伝令や偵察任務などを担う重要なものでした。武田家が滅亡すると、昌忠は徳川家康に仕官し、新たな主君のもとでその能力を発揮することになります。

徳川家康は、昌忠を侍大将として取り立て、同心24名を与えました。これは、昌忠が家康から厚い信頼を得ていた証拠と言えるでしょう。さらに、本能寺の変で織田信長が死去した後、甲斐国が徳川領となると、昌忠は桜井信忠、石原昌明、小田切茂富と共に、徳川四奉行の一人として甲斐国の支配に深く関わることとなりました。四奉行は、領内の政治、経済、軍事を統括する重要な役職であり、昌忠はその一翼を担い、寺社宛の禁制などの文書にその名を多く残しました。これらの禁制は、寺社の保護と統制を目的としたもので、昌忠が甲斐国の安定に尽力したことを物語っています。

慶長11年（1606年）11月12日、跡部昌忠は63歳でその生涯を閉じました。彼の死後、子孫は江戸幕府の旗本として存続し、その家系は幕末まで続きました。これは、昌忠の功績が幕府からも認められ、その家が厚遇されたことを示唆しています。

また、武田家中には、昌忠と同姓同名で修理亮を称した別人が存在したことが記録されています。これは、戦国時代において同姓同名の人物が複数存在することが珍しくなかったことを示しています。特に武田家のような有力大名の場合、多くの家臣を抱えていたため、同じ名前を持つ人物がいても不思議ではありませんでした。

跡部昌忠は、戦国時代から江戸時代初期という激動の時代を生き抜き、武田氏と徳川氏という二つの名門に仕え、その能力と忠誠心を発揮した人物でした。彼の業績は、甲斐国の統治と安定に大きく貢献し、その功績は後世にまで語り継がれています。

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