小田切茂富

小田切茂富（おたぎり しげとみ）

生涯

小田切茂富は、戦国時代末期から江戸時代初期にかけて活躍した武将です。甲斐武田氏、そして後に徳川氏に仕え、徳川四奉行の一人としてその名を歴史に刻みました。『寛永諸家系図伝』や『寛政重修諸家譜』では、実名を「昌吉」と記していますが、文書上では「茂富」の名が確認されています。

出自と武田家時代

『寛政重修諸家譜』によると、父は小田切昌成、母は武田家の譜代家老である馬場信春の妹とされています。また、牛奥織部の娘を妻として娶っています。

『甲陽軍鑑』には、茂富が子である次太夫と共に原昌胤の「おぼへの衆」として配置されていたと記されています。武田氏家臣としては、天正6年（1578年）に武田家から官途状が与えられた記録が残っています。

徳川家への仕官

天正10年（1582年）3月、織田信長による武田征伐により甲斐武田氏が滅亡すると、茂富は徳川家康に仕えました。家康は、信長没後の天正壬午の乱を経て甲斐国を支配下に置き、武田遺臣たちは家康に忠誠を誓いました。この時の「天正壬午起請文」には、茂富が信玄近習衆として名を連ねています。

茂富は家康の甲斐統治に深く関与し、「棲雲寺文書」によると、天正11年4月20日には、同じく武田遺臣であった桜井信忠と連署で禁制を発布しています。

徳川四奉行としての活躍

豊臣政権下の天正18年（1590年）、家康が関東へ移封されますが、慶長5年（1600年）の関ヶ原の戦い後、甲斐は再び家康の支配下に戻りました。この際、代官頭・大久保長安の配下に徳川四奉行が設置され、茂富は慶長6年（1601年）から桜井信忠、跡部昌忠、石原昌明と共にその任を担いました。初期には、市川元松や工藤喜盛も務めていましたが、市川は文禄2年（1593年）に、工藤も天正18年から慶長年間の間に死去したとみられ、小田切、跡部が後任となりました。

茂富は、他の四奉行と共に慶長検地（石見縄）の連署状や寺社宛の禁制などに数多く名を残しており、甲斐の統治において重要な役割を果たしました。慶長12年（1607年）8月には、桜井信忠と共に平岩親吉から甲府城を受け取っています。

死去

慶長6年（1601年）9月21日には、牛奥与左衛門尉の養子となった息子・太郎右衛門が高野山成慶院において茂富の逆修供養（生前供養）を行いました。そして、茂富は慶長16年（1611年）、80歳でその生涯を閉じました。

人物

小田切茂富は、武田氏、そして徳川氏という二つの名家に仕え、それぞれの時代で重要な役割を果たしました。特に徳川氏においては、四奉行として甲斐の統治に尽力し、その手腕を発揮しました。

脚注

出典

『山梨県史』通史編3近世1
『山梨県史』資料編8近世1（領主）
* 『武田氏家臣団人名辞典』

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