路傍の石

路傍の石

『路傍の石』は、山[[本有三]]による長編小説で、1937年に『朝日新聞』で連載が開始されました。その後、『主婦之友』にて『新篇路傍の石』として改稿版が連載されましたが、時代の流れの中で未完に終わりました。この作品は、教養小説の影響を受け、社会主義と個人主義の対立を背景に、主人公・愛川吾一の成長を描いています。吾一の生き方は作者自身の人生とも重なる部分がありますが、細部においては異なっているとされています。

作品の背景

この作品は、大正期の社会情勢を色濃く反映しており、社会主義と個人主義の対立、没落士族の苦悩、貧困といった問題が描かれています。また、機能不全家族（アダルトチルドレン）との関連性も指摘され、現代においても再評価の動きが見られます。

初出と構成

• - 新聞連載版: 1937年1月1日から6月18日まで『朝日新聞』に連載されたものが最初です。この連載は「第一部」として完結し、吾一が事業を始めるまでが描かれました。
• - 新篇: 1938年11月から1940年7月まで『主婦之友』に連載された改稿版で、物語を最初から仕切り直したものです。しかし、作者の断筆により未完に終わりました。

現在刊行されている多くの『路傍の石』は、作者が最も区切りが良いとした「次野先生」の章までで終わっています。

あらすじ

物語は明治中期を舞台に、尋常小学校に通う愛川吾一が主人公です。彼は成績優秀な少年でしたが、ある出来事をきっかけに「勉強ばかりの点取り虫」と見下されたことに反発し、無謀な行動に出てしまいます。その際に担任教師の次野から諭され、「吾一」という名前の意味を教えられます。

吾一は中学校進学を夢見ていましたが、家は没落士族の家系で、父は不在がち、母は内職で生活を支えるという経済状況から、進学を諦めざるを得ません。近所の書店主が学費援助を申し出るも、父のプライドによって拒否されます。そして吾一は、借金のカタとして呉服屋に丁稚奉公に出されます。

呉服屋では「五助」と改名させられ、辛い日々を送る吾一。しかし、母の死をきっかけに、父を頼って上京します。ところが、東京の下宿屋では雑用係としてこき使われ、挙げ句の果てに追い出されてしまいます。途方に暮れる中、吾一は活字拾いの仕事に就き、印刷工として文字を扱う仕事にやりがいを見出します。その後、再会した次野先生の助けもあり、夜学にも通えるようになり、成長していきます。

登場人物

• - 愛川吾一: 主人公。
• - 愛川庄吾: 吾一の父。
• - 愛川おれん: 吾一の母。
• - 京造: 吾一の友人
• - 福野秋太郎: 吾一の同級生で、呉服屋の息子
• - おきぬ: 吾一の初恋の相手、秋太郎の妹
• - 次野立夫: 吾一の担任教師
• - 黒川安吉: 書店主で、吾一に学費援助を申し出た人物
• - 志田すみえ
• - 志田かよ子
• - 黒田
• - おとむらいのおきよ

* 「次野先生」以降の登場人物
- およね: 新聞連載版で登場する下宿先の娘
- 得次
- 大明堂（文明堂）主人
- 支配人
- 藤本
- 新論社社長

映画化

『路傍の石』は、戦前・戦後にかけて4回映画化されています。特に1938年版は、文部省推薦映画第一号に指定され、高い評価を得ています。他にも、1955年、1960年、1964年に映画化されています。

テレビドラマ化

NHKで2度ドラマ化されており、1963年と1966年にそれぞれ放送されています。

テレビアニメ化

1986年には、日本テレビ系「青春アニメ全集」でアニメ化もされました。

作品の評価と影響

『路傍の石』は、発表当時から多くの人々に感動を与え、今日に至るまで読み継がれています。主人公・吾一の生き方は、困難に立ち向かう人々の姿を象徴し、読者に勇気を与えます。また、教育や社会問題に関する深い洞察は、現代においても重要な示唆を与えてくれます。

この小説は、文学賞にもその名を残しており、「路傍の石文学賞」「路傍の石幼少年文学賞」が設けられています。

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