路地裏の少年

路地裏の少年 - 浜田省吾、原点にして普遍的なメッセージ

「路地裏の少年」は、シンガーソングライター浜田省吾が1976年4月21日にリリースしたデビューシングルです。アルバム『生まれたところを遠く離れて』と同時発売されました。この曲は、浜田自身の青春時代の苦悩や葛藤、そして社会への鋭い眼差しが込められた作品であり、彼の音楽キャリアを語る上で欠かせない重要な一曲と言えるでしょう。

制作背景

浜田が16歳から22歳までの広島、そして横浜での生活体験が色濃く反映されています。大学在学中には学園闘争が激化し、キャンパスは荒廃。彼はベアリング工場でのアルバイトで生計を立てながら、労働者たちの生き様に触発され、この歌詞を書き上げました。23歳の誕生日前日に完成したため、歌詞の最後は「22歳」となっています。当初は「青い目の少女」というタイトルで、浪人時代に出会ったアメリカ人留学生との淡い恋心を歌ったものでしたが、制作過程でテーマが変更されました。ジャクソン・ブラウンにその経緯を話した際、「本当に大切な思い出は自分だけのものにするのだね」と言われたというエピソードが残っています。

多彩なバージョン

「路地裏の少年」は、これまでに様々なバージョンが存在します。

1. 1976年4月21日発売のシングルEPバージョン
2. 1976年4月21日発売のアルバム『生まれたところを遠く離れて』収録バージョン
3. 1986年7月16日発売の12インチ・シングルバージョン
4. 1986年9月4日発売のアルバム『J.BOY』収録バージョン
5. 1999年発売『J.BOY』1999年リミックス、リマスター
6. 2016年発売『J.BOY』1999年版音源の2016年リマスター
7. 1996年公開映画『スーパースキャンダル』エンディングバージョン

特に、12インチ・シングルバージョンでは、デビュー時にカットされた3番の歌詞が復活し、新たなアレンジで歌われています。

エピソード

この曲にまつわるエピソードも数多く存在します。

後にディレクターとなる須藤晃は、パチンコ屋で初めてこの曲を聴いた際、歌詞を聴き間違えたことで、浜田の文学性に感銘を受けたと言います。
HOUND DOGの大友康平は、アマチュア時代にラジオでこの曲を聴き、プロになる決意をしたと語っています。
歌人・俵万智の歌集『サラダ記念日』には、この曲をテーマにした歌が収録されています。
Something ELse|Something_ELseがテレビ番組でこの曲をカバーしたこともあります。

12インチ・シングル

アルバム『J.BOY』の先行シングルとしてリリースされた12インチシングルでは、カップリング曲として「晩夏の鐘」と「Walking in the rain」が収録されています。「晩夏の鐘」はヴォーカル入りバージョン、「Walking in the rain」は時任三郎への提供曲のセルフカバーとなっています。

再発シングル

1989年には、CBS・ソニー発足20周年を記念した「Platinum Single Series」の一環として、2ndシングル「愛のかけひき」との両A面でCDシングル化されました。ジャケットも新たに撮影されたものが使用されています。

記録

「路地裏の少年」は、浜田省吾のシングルとしては過去最高の11位を記録しました。

「路地裏の少年」は、浜田省吾の原点であると同時に、時代を超えて人々の心に響く普遍的なメッセージを持った楽曲です。若者の焦燥感や社会への眼差し、そして未来への希望が込められたこの曲は、これからも多くの人々に愛され続けることでしょう。

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