路思義教堂

路思義教堂（ルース・チャペル）

台湾の台中市に位置する東海大学のキャンパス内にある路思義教堂（ルース・チャペル）は、その独特な建築様式で知られるプロテスタントの教会堂です。この教会堂は、著名な台湾人建築家である陳其寬と、中国系アメリカ人建築家イオ・ミン・ペイによって設計されました。

歴史

路思義教堂は、アメリカの雑誌「タイム」と「ライフ」の創刊者であるヘンリー・ルースが、中国で宣教師をしていた父ヘンリー・W・ルースを記念して寄贈した資金をもとに建設されました。「路思義」という名前は、ヘンリー・ルースの中国語表記「亨利・路思義」に由来します。

19世紀末以降、中国キリスト教大学聯合董事会によって中国大陸に13のキリスト教大学が設立されましたが、1949年に中華人民共和国が成立すると、これらの大学は閉鎖を余儀なくされました。1951年、董事会は中国大陸以外でのキリスト教高等教育の場を拡大しようと、台湾での大学設立を決定。候補地として台中市が選ばれ、1953年に東海大学が開校しました。

キャンパスの設計は、当初ニューヨークで構想が練られ、イオ・ミン・ペイに依頼されました。しかし、多忙のため、張肇康と陳其寬が設計に加わることになりました。1950年代の台湾には、総合大学が国立台湾大学と国立台湾師範大学の2校しかなく、董事会は中国式の大学を構想しました。その結果、中国の伝統的な四合院の校舎と、三角形の教会堂という構成が採用されました。

陳其寬は、張肇康に代わって東海大学の校舎設計を担当し、路思義教堂は1962年11月1日に起工、1963年11月2日に落成しました。

建築

路思義教堂は、柱と梁を使わない独特の構造が特徴です。西洋の宗教施設がモダニズムの影響を受ける中で、三角形のシンプルな外形が採用されました。当初、イオ・ミン・ペイはゴシック[[建築]]の尖塔を2つのシェルで構成する案を提示しましたが、台湾の地震に耐えられないと判断し、断面が花瓶型の案も検討されました。最終的に陳其寬が製作した木製模型をもとに、双曲面構造が採用されました。

屋根の色は、広大な芝生の中央に位置することと、背景の青空との調和を考慮し、黄色に決定されました。菱形のレンガは、屋根の外層を覆い、内層の鉄筋やコンクリートを保護する役割を果たしています。これらのレンガは交換しやすい形状で、古いものは記念品として再利用されています。

構造設計

当初、イオ・ミン・ペイは木造での建設を希望しましたが、台湾の気候や木材の入手難から、U字型鋼の使用が検討されました。しかし、コストが高騰したため、最終的に鉄筋コンクリートが採用されました。構造設計を担当した鳳後三が構造計算書を作成し、ニューヨークでイオ・ミン・ペイにプレゼンテーションを行いました。

片側2枚ずつの計4枚の薄いシェルが菱形に配置され、下部は基礎と直結し、屋根部で両側のシェルが支え合うことで、建材の軽量化が実現しました。内部には格子状の凹面が4つあり、隙間を設けて採光性を高めています。

施工

施工は、東海大学の校舎建設で実績のある光源営造が担当しました。前例のない設計だったため、日本の打放しコンクリート建築を参考にしました。当初、教会堂は自然換気のみでしたが、後にエアコンが設置され、景観を損なわないように配慮されています。

評価

東海大学建築系の元主任である漢寶德は、路思義教堂を「台湾本島で最も著名で、歴史的価値のある建築物であり、西洋と中華の文明を融合させたものとして最良かつ中国式現代建築を代表している」と評しました。1974年には、台湾の名所をデザインした記念切手の1つにも選ばれました。

また、ゲティ財団傘下のゲティ基金が主催する「Keeping It Modern 10大現代建築」に選定され、保存・修復のための補助金が拠出されました。

2017年9月26日、台中市文化資産処は路思義教堂と鐘楼を直轄市定古蹟に登録し、2019年4月25日には中華民国文化部が国定古蹟に昇格させました。

アクセス

バス：各路線で「栄総/東海大学」下車。

鉄道：台鉄台中駅から台中市市区公車30x路、高鉄台中駅から和欣客運運行の台中市市区公車161路、台中空港から国光客運A2路をご利用ください。


路思義教堂は、その美しい建築と歴史的背景から、多くの人々に愛される場所となっています。

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