軍事郵便

軍事郵便：戦地と故郷を繋ぐ手紙の歴史と現在

軍事郵便は、戦地やそれに準ずる場所に派遣された軍人、軍属などが送受信する郵便物を指します。戦争における兵士たちの生活や心情を伝える貴重な史料であり、古切手収集家などにも人気があります。しかし、その内容は個人間の私的な通信であるため、収集の倫理性については議論のあるところです。

歴史：戦争と軍事郵便

軍事郵便の歴史は古く、戦争が続いた時代には、兵士と家族、友人などを繋ぐ重要な役割を担っていました。特に第二次世界大戦期には、多くの国が軍事郵便制度を整備し、膨大な量の郵便物がやり取りされました。野戦郵便局と呼ばれる移動郵便局が設置され、戦地の最前線まで郵便物を届けるための努力が続けられました。

日本においても、日清戦争を契機に軍事郵便制度が確立されました。明治27年勅令第67号と軍事郵便取扱細則によって制度化され、原則として軍人・軍属の送付郵便物は無料で、一方、彼らへの郵便物は正規料金が徴収されました。ただし、外地に駐屯する軍人に対しては、無料の範囲が設けられていました。

大東亜戦争（太平洋戦争）中には、帝国陸軍の野戦郵便局と帝国海軍の海軍軍用郵便所が占領地に展開され、多くの郵便物を処理しました。これらの郵便局は、占領地の地名や数字を冠した名称で運営されていました。また、中には日付入りの風景印を使用していた郵便局もあったようです。

軍事郵便では、通常の作戦に関する文書は扱わず、兵士とその家族や親族間の私信が中心でした。無料と有料の扱いがあり、士官と兵士の間で、1ヶ月に出せる手紙の枚数に差がありました。また、軍事切手と呼ばれる専用の切手や、無額面の軍用葉書、専用封筒などが支給されることもありました。

現代：変化する軍事郵便

現代では、電子メールやインターネットなどの通信手段の発達により、軍事郵便の役割は変化しています。手紙に代わる通信手段が普及し、物品輸送が主な役割となっているケースも少なくありません。

例えば、国連平和維持軍では、軍事郵便は依然として存在しますが、かつてのような手紙のやり取りは減少し、物資の輸送が中心となっています。日本国内では、在日米軍の基地や施設間の郵便は、日本郵便ではなくアメリカ合衆国郵便公社が担当しており、広義の軍事郵便とみなされることもあります。また、海外から在日米軍への郵便物は、米国軍事郵便路線を利用して配送され、日米地位協定に基づき税関検査が免除されています。

軍事郵便貯金

日本の帝国陸軍や帝国海軍の野戦郵便局では、占領地に駐屯する軍人・軍属向けの軍事郵便貯金を取り扱っていました。終戦後の混乱の中で休眠口座となってしまったものが多く、現在もその処理に課題が残されています。同様の問題は、外地出身者を含む旧大日本帝国籍の民間人が預けた外地郵便貯金にも見られます。これらの貯金は、インフレーションや通貨切り替えを経て、現在の価値は極めて小さくなっていますが、その歴史的背景から、その扱いを巡る議論は現在も続いています。

イギリスの軍事郵便

イギリスでは、British Forces Post Office（BFPO）が軍事郵便機関として機能しています。

まとめ

軍事郵便は、戦争の歴史と人々の生活を繋ぐ重要な役割を果たしてきました。その歴史と現状、そして将来について考えることは、平和と人道支援を考える上で重要な意味を持ちます。現在もなお、軍事郵便に関わる課題は存在しており、歴史的資料としての価値と個人情報の保護という観点から、慎重な対応が求められています。

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