軍馬補充部

軍馬補充部について

軍馬補充部は、日本陸軍省の外局として、軍用馬の確保と育成を目的とした組織です。その歴史は1874年に設置された軍馬局に遡り、幾度かの組織改編を経て1896年に軍馬補充部として再編されました。軍馬の調達から育成、そして資源調査まで、幅広い業務を管轄し、全国各地に支部を設けていました。

軍馬補充部の沿革

軍馬補充部の歴史は、1874年3月31日に陸軍省内に設置された軍馬局から始まります。この軍馬局は、「軍馬局条例」に基づき、馬政に関する業務全般を担い、軍馬の調教を行っていました。当初は東京と仙台に厩舎を設け、そこを拠点として活動していました。

1884年の条例改正では、幼駒の購入と育成も業務範囲に加わり、東京と宮城県に調馬隊が設置されました。さらに、三本木には出張所も設けられました。しかし、1886年には軍馬局が廃止され、その業務は騎兵局第三課へと引き継がれることになりました。

1888年、騎兵局の管轄下に軍馬育成所が設置され、東京の第一調馬隊を本部としました。また、青森、宮城県、兵庫県にも育成所が設けられました。1896年には軍馬育成所が軍馬補充署と改称され、陸軍大臣の直轄機関となりました。

同年、「軍馬補充部条例」が公布されたことにより、軍馬補充署は軍馬補充部へと改称。本部長には騎兵大佐または少将が任命され、全国に支部が設置されました。各支部では、軍馬の育成と管理が徹底的に行われました。

その後、1897年には福島県に白河支部が、1900年には北海道に釧路支部が、1908年には川上支部が、1909年には十勝支部が設置されました。また、本部は何度か移転し、1917年には陸軍省構内へと移されました。1927年には大山支部の旭川派出所が朝鮮の雄基に移転し、雄基支部となりました。1944年には各支部が中央馬廠支廠に改編されました。

1945年、陸軍省が廃止されるとともに、軍馬補充部もその歴史に幕を閉じました。

軍馬補充部の組織

軍馬補充部の長は本部長であり、騎兵大佐または少将が任命されていました。本部の下には全国各地に支部が置かれ、それぞれの地域で軍馬の育成と管理を行っていました。

主な支部は以下の通りです。

釧路支部: 北海道に位置し、白糠郡に設置されました。分厩や派出部を持ち、広大な地域で軍馬の育成を行いました。
川上支部: 同じく北海道に位置し、標茶町に設置されました。集治監の跡地を利用し、大規模な軍馬育成を行いました。
十勝支部: 北海道中川郡本別村に設置されました。西竹一も一時在籍していたことで知られています。
三本木支部: 青森県三本木町に設置され、各支部の中で最も規模が大きかった支部です。複数の分厩と派出部を持ち、広範囲にわたって軍馬を管理しました。
白河支部: 福島県西白河郡に設置され、複数の分厩と牧場を持っていました。施設の一部は現在も残っています。
六原支部: 岩手県胆沢郡に設置され、軍人官舎の一部は現在も文化財として保存されています。
大山支部: 鳥取県西伯郡に設置され、後に旭川派出所が朝鮮の雄基に移転しました。
高鍋支部: 宮崎県児湯郡に設置され、農場として利用された後、現在は農業大学校となっています。
* 雄基支部: 朝鮮に設置され、旧大山支部の旭川派出所が移転したものです。

各支部の詳細

釧路支部

1900年に白糠郡に設置され、和天別分厩を擁していました。仮事務所を釧路連隊区司令部内に設置後、白糠村に移転。音別と足寄にも派出部を設けました。現在、建物は残っていませんが、跡地には根釧西部森林管理署白糠事務所があります。

川上支部

1907年に熊牛村に設置され、集治監跡を利用しました。敷地は約三万ヘクタールにも及びました。現在、旧庁舎は「標茶町郷土館」として利用されています。

十勝支部

1909年に本別村に設置され、用地面積は1万9800ヘクタールでした。西竹一が在籍していたことでも知られています。現在は、北海道立農業大学校や九州大学の演習林として利用されています。

三本木支部

1885年に軍馬局出張所として設立され、1896年に支部となりました。各支部の中で最も規模が大きく、七戸派出部や中山派出部などを統括していました。十和田市郷土館は、旧庁舎を改良したもので、軍馬補充部時代の資料を展示しています。現在、「官庁街通り」として日本の道百選にも選ばれています。

白河支部

1897年に西白河郡に設置され、複数の分厩と牧場を持っていました。那須派出部を設置し、支部事務所の建物は現在、西郷村歴史民俗資料館として利用されています。

六原支部

1898年に胆沢郡に設置され、軍人官舎が残っています。その一部は文化財として登録され、「軍馬の郷六原資料館」として公開されています。

萩野支部

1898年に鍛冶谷沢支部の派出部として設置され、1910年に支部へと昇格しました。

大山支部

1898年に西伯郡に設置され、旭川派出所は後に朝鮮の雄基に移転しました。

高鍋支部

福元支部として設置後、高原支部を経て高鍋支部となりました。現在は宮崎県立農業大学校となっています。小林派出部は独立行政法人家畜改良センター宮崎牧場として利用されています。

雄基支部

大山支部の旭川派出所が1927年に朝鮮・雄基に移転したものです。

青野支部

1896年に加東郡に設置されました。

まとめ

軍馬補充部は、日本の陸軍における軍馬の調達と育成において、重要な役割を果たしました。各支部は、それぞれの地域で軍馬の育成に尽力し、その技術は日本の馬政に大きな影響を与えました。軍馬補充部の歴史は、日本の軍事史、そして馬の歴史においても重要な一部となっています。

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