軒輗

軒輗（けん げい）

軒輗（生年不詳 - 1464年）は、明代に活躍した官僚です。字を惟行といい、帰徳府鹿邑県を本貫としました。

生涯

永楽22年（1424年）、進士に及第し、官僚としてのキャリアをスタートさせました。初めは行人司副に任じられましたが、その才能を認められ、宣徳6年（1431年）には御史に転じました。

御史としては、福建を巡察し、不正を行う官吏を厳しく処断しました。正統元年（1436年）には、浙江の軍の粛正を担当し、職務不適格な者を多数弾劾しました。また、正統5年（1440年）には、内外の諸官司が勝手に御史を派遣することを禁止するよう進言しました。

同年、浙江按察使に抜擢されると、清廉で節倹な態度を貫き、民衆から信頼を得ました。当時、温州府と処州府には銀山がありましたが、民衆への負担が過大であったため、銀山の廃止を主張しました。一旦は廃止された銀山でしたが、後に再開の動きがあった際も、軒輗は強く反対し、民衆の負担軽減に努めました。

会稽の趙伯泰が、宋の皇族の陵墓が侵されていると訴えた際には、御史の王琳がこれを退けましたが、軒輗は実地調査を行い、趙伯泰の訴えが事実であることを明らかにしました。この功績により、英宗は豪民を処罰し、王琳らの俸給を停止しました。

その後、親の死去に伴い一時的に官を辞しましたが、後に復帰しました。正統13年（1448年）には、時政の弊害を正すための四事を上奏し、英宗に全て聞き入れられました。

正統14年（1449年）、景泰帝が即位すると、軒輗は右副都御史として浙江に駐屯し、守備を固めました。景泰元年（1450年）には、両浙の塩課の監理も兼任しました。呉金八らの反乱軍が浙江で勢力を拡大すると、原貞とともにこれを討伐し、鎮圧に成功しました。その後の反乱軍の再侵攻の際にも、防御に功績を挙げ、昇進しました。

その後、南京の食糧備蓄の監督に転じ、景泰5年（1454年）には左副都御史となり、南京都察院の事務を統括しました。ここでは、職務不適格な御史を考査し、降格させるなど、組織の立て直しにも尽力しました。

天順元年（1457年）2月、北京に召還され、刑部尚書に任じられました。しかし、数ヶ月後には病を理由に帰休を願い出ました。英宗は軒輗を労い、過去の清廉な行いを称えました。

翌年、南京の食糧備蓄を監理する官が欠員となった際には、李賢の推薦により、再び左都御史として南京に赴任しました。天順8年（1464年）夏、老齢を理由に致仕を願い出ましたが、返事を待たずに帰宅し、入浴中に死去しました。諡は介粛といい、その著書として『奏議』4巻が残されています。

軒輗は、清廉で公正な官僚として、その生涯を民衆のために尽くしました。その功績は、明代の歴史に名を刻んでいます。

脚注

* 参考文献：『明史』巻158 列伝第46

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