軟胞子虫

軟胞子虫についての詳細

軟胞子虫（学名：Malacosporea）は、コケムシに寄生する非常に特異なミクソゾア門の一系統です。この生物群の特徴は、胞子が極嚢を持つことであり、硬い殻を形成しない点です。これにより、粘液胞子虫類と一線を画しています。さらに、この生物群は、複雑な体制を持った祖先動物と、単純化された形態を持つ粘液胞子虫類との間の「ミッシングリンク」として位置付けられることもあります。現在、知られている種は2つあり、両者は軟殻目 Saccosporidae 科に属しています。

イトクダムシ（Buddenbrockia plumatellae）

イトクダムシは長さ約2mmの形態を持ち、蠕虫のような体や、扁平な一層の細胞からなる袋状の体を形成します。この生物は、どちらの形態でも胞子を生じることが特徴です。蠕虫様の形態は、世界中の淡水産コケムシから発見されており、1910年に初めて記載されて以来、長い間その分類は不明でした。体は繊毛に覆われておらず、1層の上皮で包まれ、内部には未分化な細胞が詰まっています。

成長が進むと体内に体腔が形成され、体は四つの区画に分かれ、その中心には筋細胞があります。この筋肉は体の前後方向に配置されており、全体として螺旋状に動くことができます。このことから、イトクダムシは線虫類に似た体制を持っていると考えられていますが、20世紀末から21世紀初頭にかけての詳細な研究により、この生物はコケムシから見つかる軟胞子虫 Tetracapsula bryozoides と同一であることが明らかになりました。

イトクダムシは、トルコ、ベルギー、イギリス、日本で確認されており、日本ではヒメテンコケムシに高い寄生率が知られています。しかし、近年の環境の変化や開発の影響で、利根川水系ではその存在が確認されなくなっています。

Tetracapsuloides bryosalmonae

もう一つの重要な種は、Tetracapsuloides bryosalmonae です。この生物は淡水産コケムシの体腔内を浮遊し、胞子を蓄える袋状の形態をとります。元々、サケ科魚類に感染する可能性があり、増殖性腎臓病（PKD）の病原体として知られていました。長い間、粘液胞子虫との関連性が考えられていましたが、成熟した胞子を形成しないことから、分類には注意が必要でした。

1999年に行われた实验や遺伝子配列解析により、コケムシ類から発見された胞子がサケ科魚類に感染することが確認され、正式に Tetracapsula bryosalmonae という名前で命名されました。その後、Tetracapsula 属は無効化され、新たに Tetracapsuloides 属に移されました。

この生物の伝播が人間の活動、特に魚類の養殖や放流によって拡大する可能性についても研究が進められていますが、これまでの調査からは、魚類への感染がどのような意味を持つかは未解明のままです。

まとめ

軟胞子虫は、その特異で複雑な進化的歴史を持つ寄生虫です。イトクダムシや Tetracapsuloides bryosalmonae の研究を通じて、彼らの生態学的役割や寄生関係の理解がさらに深まることでしょう。これらの知識は、今後の生態系保全や寄生虫研究において重要な意義を持つと考えられます。

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