転輪王経

『転輪王経』の概要

『転輪王経』（巴: Cakkavatti-sutta）は、パーリ仏典に属する経典であり、経蔵の長部において第26経として位置づけられています。この経典は、釈迦が語る物語を通じて、歴史的な転輪王たちの教訓が描かれています。転輪王は、法輪を持って世を治める理想の王として象徴されており、経典の内容は人々の行動とその結果に焦点を当てています。

経典の構成と内容

この経典には、様々な登場人物がいますが、中心となるのは仏陀である釈迦です。物語は、釈迦がマガダ国のマトゥラーに滞在し、比丘たちに教えを説く場面から始まります。最初に釈迦は、自燈明や法灯明、つまり自らの内なる光や法に帰依する大切さを語ります。

さらに、釈迦は過去の転輪王たちの時代を思い起こさせる話に移ります。ここで語られるのは、ダルハネーミという名の転輪王の存在です。彼は法輪などの七宝により、広い国土を治めました。しかし世代が進むにつれて、善法は次第に失われ、その結果、人々の寿命は恐ろしいほどに短縮されてしまいました。かつては8万年もあった寿命が、わずか10歳にまで縮んでしまったのです。

善法の復興

この物語の中で大きな転機が訪れます。人々の中には暴力から逃れ、森林や洞窟に隠れて生きる者たちがいました。彼らは五戒を守り、非礼や不敬を避けることで、善法の復興を試みます。こうした努力によって、寿命は再び8万歳に戻り、失われた秩序が回復するのです。地上の人々は、ジャンブディパ（閻浮提）として知られる豊かで平和な国を築き、ヴァーラーナシーという名の新しい都が形成されます。

この新しい時代の中で、サンカという名の新たな転輪王が登場し、彼の下でマイトレーヤ（弥勒）が現れると言われています。この未来における理想的な世界では、全ての存在が調和し、無上の梵行が達成されるとされています。

経典の教え

釈迦は物語を語り終えた後、再度自燈明や法灯明、四念処などの重要な教えを繰り返し、また、四如意足、四禅、四無量心についても触れました。このようにして、比丘たちは深い感銘を受け、教えを心に刻むこととなります。

参考文献と関連項目

この経典は、日本語でも多くの訳が提供されており、『南伝大蔵経・経蔵・長部経典3』や『パーリ仏典 長部（ディーガニカーヤ） パーティカ篇I』などで読むことができます。また、関連するテーマとして、自燈明・法灯明や四念処、弥勒菩薩、四如意足、四禅、四無量心があります。これらの要素は、『転輪王経』の教えに深く根ざしたものです。

この経典は、ただの過去の物語ではなく、現代の私たちにも多くの示唆を与える存在です。

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