軽戦車駆逐車ルッチャー

軽戦車駆逐車ルッチャー

軽戦車駆逐車ルッチャー（ドイツ語: Panzerkleinzerstörer Rutscher）は、第二次世界大戦中にドイツで設計された小型の対戦車車両です。ルッチャーは子供用のスキーやソリを意味し、日本語でも「ルットシャー」と誤って表記されることがあります。この車両は、その独特の設計から多様な用途を想定して開発が進められました。

概要

1942年、ドイツでは小型の駆逐車両の開発が活発に行われていました。多くの車両案の中でもBMW社の「ルッチャー」や「ヴェーザーヒュッテ」は特に記憶に残る存在です。1945年1月時点においても、こうした軽戦車駆逐車に対するニーズは衰えず、戦車開発委員会ではこの車両の戦術的意義が強調され、「陸上版Uボート」とも称されました。中でも降下猟兵部隊からの要望が多く寄せられ、原材料不足の中で軽量かつ効果的な対戦車車両の開発が求められました。

設計と仕様

1943年に入ると、ドイツ陸軍兵器局はBMW社に対し、牽引式の対戦車砲を搭載した車両の設計を依頼しました。ルッチャーは全高1.5m、最低地上高0.35m、重量は3.5tから5tの範囲で設計されています。防御面では正面が20mm、側面が14.5mmとされ、2名の乗員が搭乗可能でした。エンジンには直列6気筒の90hpを持つ動力源が採用され、さらに8cm PAW 600の低圧砲が2門装備される計画でした。

BMWの設計案の中には、全高約1m、全長3550mmの木製モックアップもあり、斜めに傾斜させた装甲で防御を強化し、密閉型の箱型として設計されていました。エンジンはBMW335型の6気筒エンジンが搭載され、変速機はZF社製のオールクラッチ変速機が考慮されました。

また、武装には無反動連装砲が右側にオフセットで設置され、左側天井部分には視察装置が設けられていました。しかしながら、開発は期待される進展を見せず、新たにビュッシングNAG社に発注されることが決定されました。これは3.5t、2人乗りで90馬力の空冷式4気筒エンジンを搭載する車両でした。

開発の限界

1945年の3月、戦争末期の報告はこの軽戦車駆逐車に対し、3.5tという制約に基づく駆動系や走行装置の新技術が必要と語っています。開発にはさらなる時間が必要であり、最終的な車両の完成は7tから10tを見込まれるようになりました。また、兵装を小型化する際には限られた装備しか搭載できなかったため、実用的な価値が低下しました。

主砲の革新

ペースが鈍る中、PWK8H63というラインメタルが開発した主砲は高低圧理論を利用した新たな特徴を持っていました。これにより、軽量で肉厚が薄く、ライフリングのない砲の製造が可能になり、全体の製作工程が単純化されました。この砲は、発射時の砲口初速が550m/s、最大射程は2,000mに達する能力を持っていましたが、戦車小型駆逐車の計画はその後放棄される運命にありました。

ルッチャーは、当時の戦況を反映した独特の設計思想が感じられる一方で、開発の難しさや技術的な限界を如実に示しています。

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