輪袈裟

輪袈裟（わげさ）

輪袈裟は、僧侶をはじめとする仏道修行者が首に提げる形で着用する、袈裟の一種であり、その中でも特に簡略化された装いとして知られています。正式な法要や儀式に用いる大衣（七条袈裟など）や五条袈裟とは異なり、寺院内での日常的な作業（作務）や、外出、移動といった、より活動的な場面で身につけられることが一般的です。

古来、仏弟子が着用した袈裟は、一枚の布をまとう形式が基本でしたが、日本の気候や生活様式、また修行の形態の変化に伴い、多様な形式が生まれました。輪袈裟もそうした変遷の中で生まれた略式の袈裟であり、常に仏と共にいるという仏弟子の心構えを示す標として機能します。

呼び方としては、「わげさ」と読むのが一般的ですが、「りんげさ」と読まれることもあります。また、その形状や由来から「畳袈裟（たたみげさ）」と呼ばれる別称も存在します。

輪袈裟の形状は、大きく分けて二つのタイプに分類できます。

1. 畳輪袈裟（たたみわげさ）:
これは、文字通り一枚の比較的大きな布を、細く（およそ6センチメートル程度の幅に）丁寧に幾重にも折り畳み、その畳んだ状態を保つように縫製して輪状にしたものです。畳まれた状態の大きさは、展開すると五条袈裟に匹敵する広さを持つものもあります。これは、本来は五条袈裟の簡易的な代替としても機能しうることを想定していた名残ともされます。しかし、現代において実際にこの畳輪袈裟を広げて着用する機会はほとんどありません。畳まれた状態での携帯性と、首にかける手軽さが主眼とされています。

2. 略輪袈裟（りゃくわげさ）:
畳輪袈裟が布を折り畳むことで形状を保つのに対し、略輪袈裟は表生地を二つ折りにするなど、よりシンプルな構造で作られています。芯地などを挟んで厚みを持たせたものや、生地の裏に別の布を当てて仕立てたものなど、様々なバリエーションがありますが、畳輪袈裟のような複雑な折り畳み構造は持ちません。より現代的で、手軽さを追求した形式と言えるでしょう。

これらの輪袈裟は、宗派によって素材、色、柄、縫製の仕様などが異なる場合があります。普段着の上に手軽に着用できるため、僧侶が檀家を訪問する際や、仏事ではない会合に参加する際など、様々な場面で用いられます。これは、たとえ略装であっても、仏道を歩む者としての自覚と、仏縁を結ぶ場への敬意を示すためと考えられます。

袈裟には様々な形態がありますが、輪袈裟はその中でも最も日常に寄り添った形式の一つと言えるでしょう。同じく仏教の略装である略肩衣や、関連の深い事柄として従軍僧などが挙げられます。また、キリスト教のストラなど、他の宗教にも儀式や職位を示す布状の装束が存在し、比較対象として語られることもあります。

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