農業機

農業機（のうぎょうき）

概要

農業機は、主に農薬や肥料を散布するために設計された航空機です。その効率的な作業能力によって、広大な耕地での作業時間を大幅に短縮します。特に、航空機の高速移動能力を活かして、農薬や肥料などを空中から散布することが主な目的となっています。農業機はヘリコプターを使用する場合もありますが、一般には軽飛行機や専用設計の航空機が多く利用されています。

これらの航空機は一般的に、薬剤散布用のポンプや散布機器を備えており、舗装されていない草地や未舗装の飛行場から離着陸が可能なSTOL（短距離離着陸）性能が求められます。複葉機が多く採用されているのはそのためで、強力なエンジンと大容量の薬剤タンクが装備されています。また、低空飛行を行う際には障害物に衝突しないよう、機体の強度も高めに設計されています。操縦室は機内に農薬が侵入しないように与圧構造とされている場合が多いです。

農業機は整備拠点から離れた地域での運用が前提ですので、機体の信頼性も重視されます。農薬や肥料、種子などに対応した多彩なオプションがあり、整備士でない農家でも扱えるように設計されている点も特長です。一般的に航続距離はそれほど重視されず、燃料タンクは小さめで、長時間の飛行に対応していないため居住性も考慮されていません。

歴史

農業機の歴史は1920年代にアメリカで始まりました。国土が広大なアメリカでは、効率よく農薬を散布する手段が求められ、初期の農業機は主に軍用機が払い下げられたものでした。1940年代からは専用機が増えていき、1950年代にはF4F ワイルドキャットなどの艦上機を基にしたアグキャットが開発されました。

アグキャットは1957年から1983年までの間に2,455機が生産され、その後も様々な農業機が登場しています。パイパー・エアクラフトをはじめ、多くのメーカーが農業用航空機を供給しており、特にアメリカでは農業機の需要が非常に高いです。また、旧ソ連をはじめとする広大な国土を持つ国々においても農業機の利用が進み、特にアントノフAn-2が広く使われるようになりました。

日本における農業機

日本では、耕地面積が比較する他の国々より狭いため、ヘリコプターが農業機として多く利用されています。2000年代以降は無人ヘリコプターやドローンの導入も進み、小規模な農地での作業の効率化が進んでいます。特に、産業用無人ヘリコプターやドローンは農薬散布において注目されています。農林水産省は無人航空機による散布用農薬について規定を設け、航空法の改正により許可が必要となるなど、制度面でも整備が進められています。

代表的な農業機

• - グラマン G-164 アグキャット（アメリカ）
• - エア・トラクター AT-400（アメリカ）
• - パイパー・エアクラフト PA-25 ポーニー（アメリカ）
• - アントノフ An-2（ソビエト／ウクライナ）
• - PZL M-18（ポーランド）
• - ヤマハ RMAX（日本）

このように、農業機は効率的な農業のための重要なツールとして、世界中で広く利用されています。

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