辻堂海岸

辻堂海岸

辻堂海岸は、神奈川県藤沢市南部に位置する砂浜で、広大な湘南海岸の一部を成しています。相模湾に面し、夏には多くの海水浴客で賑わう辻堂海水浴場が開設されます。年間を通して、サーフィンや釣りなど、多様なマリンレジャーが楽しめる地として親しまれています。

歴史の変遷

この海岸一帯は、かつて広大な砂丘と見事な松林が広がる自然豊かな場所でした。しかし、その地理的な重要性から古くより軍事利用の歴史を刻んできました。江戸時代の1728年には、幕府によって相州炮術調練場に指定され、砲術訓練が行われる土地となります。明治・大正期には帝国海軍の、第二次世界大戦後には在日米軍の演習場として利用され続けたため、長期間にわたり一般の立ち入りが制限されていました。

返還とその後の変化

辻堂海岸は1959年に在日米軍から日本へ返還され、ようやく人々が自由に海岸を訪れることができるようになりました。返還後、かつての演習場跡地である広大な砂丘地帯は大きく変貌を遂げます。海岸沿いを走るようになった国道134号の北側には、辻堂海浜公園や大規模な団地、学校群などが計画的に整備されました。これにより、開発前の自然に近い砂丘の景観はほとんど失われています。また、米軍の砲撃目標とされたという茅ヶ崎沖の烏帽子岩は、この訓練の影響で形が変わったとも言われています。

現在の利用状況

現在の辻堂海岸は、日本のサーフィン黎明期から多くのサーファーが集まる場所です。海岸へ続く昭和通りは「サーファー通り」と呼ばれ、多くのサーフショップが集積しています。一年中波を求めるサーファーたちの姿が見られますが、夏季の海水浴場開設期間中は、遊泳区域とサーフィン区域が区分されるため、安全確保のため注意が必要です。また、投げ釣りも人気があり、キスやカレイなどが釣れるため、釣り客も多く訪れます。海岸沿いにはサイクリングロードも整備され、湘南の潮風を感じながら散策や自転車を楽しむ人々で賑わいます。

「浜辺の歌」とのゆかり

辻堂海岸は、国民的愛唱歌「浜辺の歌」の作詞家・林古渓が幼少期を過ごし、その情景を詞にしたゆかりの地として知られています。この繋がりを示すように、海岸近くのサイクリングロード沿いには「浜辺の歌」を記念したボードが設置されています。さらに、2016年からはJR辻堂駅の発車メロディに「浜辺の歌」が採用され、地域と楽曲の結びつきを今に伝えています。

湘南クッキングセンター

海岸近くには「湘南クッキングセンター」があり、「おでんセンター」の通称で親しまれています。この施設は、1963年に江の島で営業していた屋台が、東京オリンピック開催に向けた景観整備のために移転してきたのが始まりとされ、複数の店舗が集まり、地元住民や海岸を訪れる人々に長く愛されています。

もう一度検索