辻山清

辻山 清（つじやま きよし、1944年10月27日 - 2006年3月15日）は、日本の右翼系政治活動家、総会屋、地主、運送会社役員。奈良県を主な活動拠点とし、その特異な言動と選挙戦術で知られた人物である。

奈良県奈良市に生まれ、奈良県立奈良商業高等学校を中途退学した。彼の活動は多岐にわたったが、特に注目されたのは、月光仮面や水戸黄門といった架空のキャラクターに扮して社会的な事件現場に姿を見せ、自らの政治的主張をアピールするパフォーマンスであった。晩年には、年齢に合わせてか水戸黄門の姿で登場することが多かった。

辻山は奈良県内の市町村を中心とした首長選挙や議員選挙に、非常に積極的に立候補した。彼の選挙活動は、しばしば常識にとらわれない手法が用いられたことで知られる。例えば、自らが発行していた「労農（新聞）」の購読を自治体に対し高額で働きかけ、これに応じない自治体の選挙には「無投票当選阻止」を掲げて対立候補として名乗りを上げたとされる。『前衛』誌などの報道によれば、立候補届出時にはマジックハンドを使用してくじを引いたり、手続きを牛歩戦術で引き延ばすなど、選挙事務を意図的に妨害する行為を繰り返していた。こうした行為により、有罪判決を受けた経験もある。また、奈良市長選挙の開票作業においては、不審な点を指摘し、六法全書を傍らに夜通し追及を続け、開票結果の確定を大幅に遅延させたこともあった。

選挙に立候補する際には、自らを無所属とすることは稀で、「市政見張番」「合併反対派」「合併賛成派」といった様々な政治団体名を名乗った。市町村合併を争点とする選挙では、対立候補の立場に応じて自身のスタンスを変えるという、独特の手法を用いた。

1990年代後半頃からは、選挙公報に自身の顔写真を掲載することを頑として拒否するようになった。この時期、夕刊フジが一面で彼の月光仮面姿と素性を報じている。地元メディアからは、顔写真のない彼の立候補が「恒例の候補」などと皮肉を込めて報じられた。しかし、奈良県、特に郡部では保守地盤が強く、首長選挙などで与野党相乗りによる無投票が多い状況であったため、辻山一派の立候補は一部の無党派層の批判票を集める結果となり、供託金没収点となる得票率10パーセントを超えることも度々あった。彼の選挙ポスターも特徴的で、水戸黄門のイラストや、自身が水戸黄門に扮した写真が使われた。同じ選挙日には、親族と思われる辻山信子や辻山とよといった人物が同時に立候補することもあった。

辻山は「無党派・庶民の声」「かい人21面相を逮捕する会」「奈良県選挙管理委員会の無法を告発する会」など、風変わりな名称を含む100近い政治団体を設立し、自ら代表を務めた。しかし、これらの団体のほとんどは一人一党で、実質的な活動実体は伴っていなかったとされる。

その穏やかな外見や公約とは裏腹に、極右思想の持ち主であった。学園前の自宅には祝日には必ず日の丸が掲げられ、「空き巣・強盗・不法侵入は殺す！」といった物騒な警告板が貼り出されていた。また、大日本菊水会青年隊を率いていた時期には、模造刀を帯びて日本共産党京都府委員会事務所に乱入し、立てこもる事件を起こして逮捕されている。さらに、過去には特定の企業に雇われ、公害病の被害者集団との間で乱闘騒ぎを起こした経験もある。

商法改正による特殊株主への利益供与禁止、ソビエト連邦の崩壊、そして多くの右翼団体にとって最大のパトロンであった笹川良一の死去など、右翼活動を取り巻く環境が厳しくなり、多くの右翼候補が活動を縮小せざるを得なくなった時代においても、辻山は精力的な立候補活動を続けた。これは、高田がんなどと同様に、広大な山林を相続したことによる潤沢な不労所得や、県内で知られた運輸会社や警備会社の役員を務めた時期があったため、選挙資金に困ることがなかったからだとされている。

2006年3月15日に死去。奈良県警は病死と発表した。彼の死去に際して報道された情報によれば、妻とは16年ほど前（1990年頃）に離婚しており、長年トレードマークであった月光仮面の衣装は元妻の手作りであったことが明らかにされた。月光仮面の原作者である川内康範からは著作権侵害として無断使用を指摘されたこともあったが、後に辻山が謝罪したことで黙認される関係になっていたという。

辻山の活動は、泡沫候補としての側面が強かったが、無投票になりがちな地方選挙において一定数の批判票を集めたり、開票作業を妨害するなど、地方政治の場に波紋を投げかける存在であった。パナウェーブ研究所の騒動、オウム真理教の南青山総本部前、グリコ・森永事件関連、東京佐川急便事件の関係者宅前など、社会的な注目が集まる現場にも姿を現し、その特異なパフォーマンスはしばしばメディアに取り上げられた。

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