辻斬

辻斬（つじぎり）とは

辻斬とは、武士などが街中で通行人を刀で斬りつける行為を指します。この言葉は中世の室町時代から使われていましたが、特に戦国時代から江戸時代初期にかけてこの事件が頻発しました。

江戸幕府が成立する直前の1602年、徳川家は辻斬を禁止し、その実行者に厳しい罰を科すことを決定しました。具体的には『御定書百箇条』の中で、辻斬を行った者には引回しの上死罪に処されると定められました。

辻斬の背景と理由

辻斬を行う理由はいくつかあります。武士が刀の切れ味を試すため、すなわち試し斬りを目的とすることが多かったほか、単なる憂さ晴らしや金品を奪う目的、または自身の武芸の腕前を試すための行動でもありました。たとえば、『八十翁疇昔物語』には、ある地域の広い草原で毎晩辻斬が行われたという記録があります。

辻斬の具体的な事例

1605年の『時慶記』には、千人斬りの犯人が3人捕らえられ、指をもぎ取られるという厳しい処罰があったにもかかわらず、辻斬被害が収まらなかったことが記されています。江戸時代後期の医師である井上玄桐が記した逸話では、徳川光圀が友人との試し斬りの言葉を断ったエピソードが伝えられています。この出来事は、無辜の人を斬ることの非情さを強調するものであり、光圀はその後、その友人との交流を断ったとされています。

また、『甲子夜話』によれば、江戸では若い武士たちが頻繁に辻斬を行い、人々の悲鳴が広がっていたと言います。そのため、幕府は何度も辻斬を行う者を捕まえるように指示していました。

社会への影響

内藤鳴雪は自身の子供時代に、辻斬が非常に頻繁に行われていたことを述べています。特に田舎出身の侍が、試し切りや経験を積むために人通りの少ない場所で人を斬ることがあったと記録されています。鳴雪自身も斬られた死体を目撃したことがあり、その死体は引き取る者を待って菰（こも）をかけられて置かれていたとも言われています。

公認の辻斬行為

興味深いことに、古代ギリシアのスパルタでは「クリュプテイア」という制度が存在し、青年たちが奴隷階級であるヘイロタイを殺害することを求められていました。これは精鋭兵士を育成するための訓練の一環であり、戦場での機敏さを養う目的でもありました。このように、支配者層が辻斬行為を実践的な訓練として公認していたこともあります。

辻斬に関する迷信

さらに、昔から「千人の人を斬ることが悪病を治す」と言われており、20世紀には性行為に転じ、「千人斬り」と称されるようになったことも注目されます。

このように、辻斬は社会に大きな影響を与えた現象であり、時代の流れの中で変わりゆく文化や価値観を反映したものでした。

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