内藤鳴雪

内藤鳴雪：激動の時代を生きた俳人の生涯

内藤鳴雪（ないとう めいせつ）は、弘化4年（1847年）に生まれ、大正15年（1926年）に没した幕末の伊予松山藩士であり、明治・大正期の俳人です。幼名を助之進、後に師克、素行と名を変え、俳号として「鳴雪」を用いました。この俳号は「何事も成行きに任す」という言葉に由来するとされています。

生涯

鳴雪は伊予松山藩の上級武士の家に生まれ、幼少期から漢籍を学び、草双紙や寄席、義太夫にも親しみました。1855年には安政の大地震で被災しましたが、幸いにも無事でした。1863年に元服し、明教館で漢詩を学び、翌年には藩主の小姓として長州征伐に従軍。その後、京都で水本保太郎の塾に学び、東京の昌平坂学問所へ入寮しました。

明治維新後、鳴雪は松山に戻り、明教館の学則改革に携わりました。1880年には文部省に転じ、書記官・往復課長を歴任。旧藩主久松家の諮問員としても活動し、東京に学ぶ松山の子弟のための寄宿舎監督を務めました。この寄宿舎で、正岡子規、河東碧梧桐といった若者たちと出会い、彼らの才能を育みました。

1892年、鳴雪は21歳年下の子規を俳句の師と仰ぎ、子規の紹介で伊藤松宇らの句会『椎の友』に参加。その俳風は恬淡・洒脱であり、人柄がよく表れていました。「鳴雪」の他に、南塘、破蕉、老梅居といった号も用いました。1897年、高浜虚子が東京で続刊した『ホトトギス』に投句を選び、『老梅居雑話』などを掲載。また、万朝報、読売新聞、中外商業新報、日本人などで俳句選者を務めました。

鳴雪は、与謝蕪村の句集を探し出し、輪講して『ホトトギス』に掲載。『蕪村句集講義』として上梓しました。1907年に舎監を退いた後も、寮の世話役として活動。愛媛県教育協会の名誉会員や史談会の中心人物としても活躍しました。大正9年（1917年）には、旧寮生の発起により、道後公園に寿碑が建てられ、除幕式に招かれました。1925年に肋膜炎を患い、翌年、東京の自宅で亡くなりました。

俳句への貢献

内藤鳴雪は、俳人として数多くの作品を残しました。その句風は、自然や日常の風景を淡々と描写する中に、独特のユーモアや洒脱さが感じられるものでした。また、俳句の指導者としても優れており、正岡子規をはじめとする多くの俳人を育てました。蕪村研究にも力を入れ、その功績は高く評価されています。

主要な文業

鳴雪は、数多くの俳句集や評論集を著しました。主な著書として、『俳句独習』、『春夏芭蕉俳句評釈』、『秋冬芭蕉俳句評釈』、『七部集俳句評釈』、『春夏蕪村七部集俳句評釈』、『秋冬蕪村七部集俳句評釈』、『元禄二十家俳句講義』、『老梅居俳句問答』、『老梅居雑著』、『鳴雪俳話』、『鳴雪句集』、『俳句作法』、『鳴雪俳話と評釈』、『太祗俳句評釈』、『中外俳句抄』、『蕪村句集講義 春之部』、『鳴雪俳句鈔』、『俳句のちかみち』、『秀抜六千句』、『俳句はいかに作りいかに味ふか』、『俳句評釈』、『鳴雪自叙伝』などがあります。これらの著書は、俳句の研究や学習に役立つ貴重な資料となっています。

内藤鳴雪は、幕末から大正にかけての激動の時代を生き、俳人として、また教育者として、多大な功績を残しました。その足跡は、今もなお多くの人々に影響を与え続けています。

只たのむ湯婆一つの寒さかな

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