近代日本思想大系

近代日本思想大系

近代日本思想大系（きんだいにほんしそうたいけい）は、1975年から1990年にかけて筑摩書房によって出版された全36巻にも及ぶ日本思想史の叢書です。この著作群は、明治維新から1945年の敗戦までに成し遂げられた日本の主要な思想的著作を網羅しており、思想の発展を理解する上で欠かせない資料となっています。

出版の背景

この叢書は、先行する『現代日本思想大系』（全35巻、1963年から1968年に刊行）の後継企画として位置づけられています。現代日本思想大系はテーマ別に編集されたのに対し、近代日本思想大系は著者別に整理されている点が特徴です。このため、収録されている著作は1945年の敗戦以前のものに限られており、それにより近代日本思想を深く掘り下げることが可能となっています。

内容の構成

全巻の各巻には「解説」「参考文献」「年表」「著者略歴」といった付属情報が含まれており、これらは読者に対する親切な配慮の一環です。特に、解説部分は各著作の背景や思想的な位置づけが詳細に説明されており、初心者から専門家まで幅広い読者にとっての助けとなります。

1978年には、刊行元である筑摩書房が業績不振に伴い会社更生法を申請する事態が発生しましたが、その間にも刊行は続けられました。このように、刊行開始から最終配本に至るまで実に15年の年月を要しました。編集方針が明確であるにも関わらず、出版プロセスは多くの困難を伴いましたが、その努力が実を結びました。

初めての試み

この叢書では、進化論啓蒙家の丘浅次郎やアナキストの石川三四郎といった、従来あまりスポットが当てられなかった思想家に独立した巻が充てられた点も注目に値します。この取り組みは、近代日本思想の多様性や奥深さを伝える一助となります。

関連巻

また、近代日本思想大系は日本思想史における重要な位置を占めており、同じ筑摩書房から刊行されている『戦後日本思想大系』や、岩波書店から出版される『日本近代思想大系』とも関連性があります。特に日本近代思想大系は、幕末から明治憲法制定期までの思想を扱っており、名称が似ているため注意が必要です。

まとめ

このように、近代日本思想大系は、時代背景と思想の変遷を理解するための貴重な資料を提供しており、単なる文献集にとどまらない、深い思想的な洞察をもたらしています。思想史の研究者や一般の読者にとって、大いに役立つ一冊となることでしょう。

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