日本近代思想大系

『日本近代思想大系』は、1988年から1992年にかけて岩波書店より刊行された、日本思想史における重要な叢書です。全24巻（うち別巻1）で構成されており、日本の近代思想を研究する上で不可欠な文献を網羅的に収録しています。

概要

この大系は、『日本思想大系』の後継企画として位置づけられています。『日本思想大系』が古代から江戸時代までの思想を扱っているのに対し、『日本近代思想大系』は、開国・維新から大日本帝国憲法発布前後の時期、具体的には、幕末から明治時代初期にかけての思想動向を深く掘り下げています。第一回配本は1988年5月の『天皇と華族』であり、最終配本は1992年4月の『近代史料解説・総目次・索引』でした。

編集委員には、加藤周一、遠山茂樹、中村政則、前田愛、松本三之介、丸山眞男、安丸良夫、由井正臣といった、日本思想史研究を代表する学者たちが名を連ねています。彼らの専門性と知見が、この大系の学術的な信頼性を保証しています。

この大系の特徴は、各巻がテーマ別に構成されている点です。『日本思想大系』が著者別に文献を収録しているのに対し、『日本近代思想大系』では、「開国」、「天皇と華族」、「官僚制　警察」、「軍隊　兵士」、「宗教と国家」、「教育の体系」、「法と秩序」、「経済構想」、「憲法構想」、「学問と知識人」、「言論とメディア」、「対外観」、「歴史認識」、「科学と技術」、「翻訳の思想」、「文体」、「美術」、「芸能」、「都市　建築」、「家と村」、「民衆運動」、「差別の諸相」、「風俗　性」といった、多岐にわたるテーマを扱っています。

各巻では、「原文をそのままの形で読む」という方針に基づき、詳細な解題や注釈が付された本文テクストが収録されています。さらに、巻末には、研究者による「補注」や「解説」が加えられており、読者が文献の内容を深く理解できるよう配慮されています。

この大系は、同時代の文献を収録対象とする『明治文化全集』と比較されることがあります。しかし、『明治文化全集』が稀覯文献の復刻を重視し、各文献の全文テクストを収録しているのに対し、『日本近代思想大系』は、より多くの文献を収録することを優先しているため、新聞や雑誌の論説といった短いものを除いて、大半が抜粋収録となっています。

全巻の構成

以下に、全巻の構成をリストアップします。各巻には、そのテーマに沿った様々な文献が収録されており、当時の社会、政治、文化、思想に関する幅広い理解を深めることができます。

1. 『開国』
2. 『天皇と華族』
3. 『官僚制　警察』
4. 『軍隊　兵士』
5. 『宗教と国家』
6. 『教育の体系』
7. 『法と秩序』
8. 『経済構想』
9. 『憲法構想』
10. 『学問と知識人』
11. 『言論とメディア』
12. 『対外観』
13. 『歴史認識』
14. 『科学と技術』
15. 『翻訳の思想』
16. 『文体』
17. 『美術』
18. 『芸能』
19. 『都市　建築』
20. 『家と村』
21. 『民衆運動』
22. 『差別の諸相』
23. 『風俗　性』
24. 『近代史料解説・総目次・索引』

関連書籍

この大系と関連する書籍として、『近代日本思想大系』（筑摩書房）があります。こちらは、著者別に幕末維新期から1945年までの著作を収録しています。また、『日本思想大系』や『明治文化資料叢書』、『明治文化全集』、『明治文学全集』なども、関連する研究資料として参照されることがあります。

外部リンク

* 日本近代思想大系 - [岩波書店]]: [http://www.iwanami.co.jp/

『日本近代思想大系』は、近代日本の思想を多角的に捉えるための貴重な資料群であり、研究者だけでなく、歴史や思想に関心のある一般読者にとっても、重要な情報源となるでしょう。

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