近江鉄道モハ203形電車

近江鉄道モハ203形電車

近江鉄道モハ203形電車は、かつて近江鉄道に在籍していた通勤形電車です。モハ203、モハ204、モハ205の3両が存在しましたが、モハ204は後に荷物・郵便合造車に改造され、モユニ11形11と改称・改番されました。本稿では、モユニ11形についても記述します。

概要

モハ203形は、その出自が複雑です。モハ203は元小田急電鉄デハ1600形1610の車体を、モハ204は元京王帝都電鉄デハ1700形1707の車体を、それぞれ旧型国電の廃車発生品と組み合わせて登場しました。モハ205は三岐鉄道から譲り受けたモハ140形141を編入したものです。これらは、いずれも両運転台車であり、性能が同一であったことから、同一形式にまとめられました。

特筆すべき点として、近江鉄道の旧型車の多くに施工された、制動装置の電気指令ブレーキ化やFS40台車への換装は、本形式には施工されませんでした。そのため、最後までAM系自動空気ブレーキおよび釣り合い梁式DT10台車のままで運用されました。

各車両の詳細

モハ203

1967年（昭和42年）12月に、東京急行電鉄（東急）からサハ3100形3101を譲り受け、サハ100形101として竣工しました。その後、車体の老朽化が進んだため、1970年（昭和45年）に小田急デハ1600形1610の車体との載せ替えが西武所沢車両工場にて実施され、同時に電装化も行われ、モハ203形203と改称・改番されました。モハ200形と同様の経緯をたどっていますが、モハ201・202が片運転台車であったのに対し、モハ203は両運転台車であったため、別形式に区分されました。

その後、ワンマン化改造を受け、多賀線などの区間運用で活躍しましたが、経年による老朽化が目立ち始めたため、台枠に親会社である西武鉄道から譲り受けた701系クハ1742の車体部品を切り継ぐという大改造が施され、モハ220形222として再生し、外観は大きく変わりました。車籍は引き継がれていますが、外観上はモハ203の面影は全く残っていません。

モハ204（モユニ11）

名義上は、自社工場製のクハ1212形1212を1973年（昭和48年）に電動車化したものとされています。しかし、実際には京王デハ1700形1707の車体を譲り受け、西武所沢工場にて中古の床下機器と組み合わせたものであり、種車から引き継がれたものは車籍のみです。同時に両運転台化改造が施され、性能・構造の近い203形に統合されました。

その後、モユニ10形の老朽化に伴い、両運転台車であったモハ204が後継車両として選ばれ、1980年（昭和55年）に車内を荷物・郵便合造仕様に改造の上、モユニ11形11と改称・改番されました。しかし、1984年（昭和59年）1月末をもって鉄道郵便輸送が廃止されたため、モユニ11形も用途を失い、運用から外れて長期間休車となりました。そして、1990年（平成2年）12月に廃車となりました。

除籍後も長らく彦根工場構内に留置されていましたが、彦根駅東口再開発に伴い、留置場所であったヤードが廃止されることになったため、2004年（平成16年）7月に解体処分されました。

モハ205

1980年（昭和55年）11月に三岐鉄道から譲り受けた元モハ140形141ですが、元はモハ203と同様に元小田急デハ1600形1605です。近江鉄道入線に際しては、小田急（三岐）当時の車籍をそのまま継承する形で入籍しました。三岐鉄道入線時に、両運転台化および主要機器の旧型国電の廃車発生品への換装が施されていましたが、近江鉄道入線に際して、台車を原形の住友金属工業製の帯鋼リベット組立型釣り合い梁式KS33からDT10に交換し、他車と仕様を揃えました。パンタグラフは、他の車両が貴生川・近江八幡寄りに搭載されていたのに対し、モハ205のみ米原寄りに搭載されていた点が特徴でした。

1983年（昭和58年）に、500系クハ1506の新製に際して車籍を譲りましたが、同年にモユニ10形10より車籍を継承する形で再入籍しています。そのため、モハ205という車番に変化はなかったものの、車籍には変化が生じています。

モハ203と同様にワンマン化改造を受け、主に区間運用で使用されましたが、同様に車体の老朽化が進行したため、台枠と主要機器を流用してモハ220形221として再生されました。こちらも車籍が引き継がれていますが、種車となったモハ205の面影は全く残っていません。

参考文献

『鉄道ピクトリアル』 鉄道図書刊行会
近江鉄道特集各号
* 1982年8月号（通巻405号）『他社へ行った小田急の車両』 p.158

もう一度検索