近江鉄道800系電車

近江鉄道800形・820形電車

近江鉄道800形電車と820形電車は、近江鉄道が所有する通勤形電車です。これらの車両は、西武鉄道で使用されていた401系電車を譲り受け、近江鉄道の彦根工場で改造したものです。近江鉄道では、「系」ではなく「形」を使用します。

概要

1991年から1997年にかけて、西武401系電車が近江鉄道に譲渡されました。これらの車両は、近江八幡・貴生川側から、モハ800形（820形）-モハ1800形（1820形）の順に編成されています。改造にあたっては、以下の共通項目が実施されました。

ワンマン運転対応工事（車外バックミラー、料金表、運賃箱の設置など）
空気制動から電気指令式ブレーキへの変更
連結面寄りの裾角の切り欠き
電気連結器の撤去
モハ800形・モハ1800形の連結面側パンタグラフの撤去

主要機器は制動装置の改造を除き、西武時代からほぼそのまま使用されています。車体塗装は西武時代と同様の黄色一色で、全編成で共通です。近年では、ステンレス地のままだった客用扉の黄色塗装化や、シートモケットの更新、つり革の交換が順次行われています。

15編成30両が改造され、最盛期には13編成26両が活躍しました。2022年6月19日現在では、11編成22両が在籍しています。

2015年後半からは、扉開閉時に鳴るドアチャイムが設置されています。

800形

800形は、11編成22両が在籍する基幹形式です。正面は220形に似た額縁タイプの三面折妻で、前照灯と標識灯は角型の一体ケースに収納されています。ただし、800形は非貫通構造である点が220形と異なります。種車の形態の違いや改造時期が長期間にわたるため、編成ごとに外観に差異が見られます。

800形は、廃車となった従来車を更新する形で竣工しており、一部は開業当時の1898年製造の車籍を引き継いでいます。

各編成の詳細

801F (モハ801-モハ1801)：1999年登場。初期型車体を持ち、当初は1M1T編成で、パンタグラフも2基搭載でした。また、車体塗装はライオンズカラーでしたが、後に黄色一色に変更されました。ギャラリートレインとしても使用されましたが、2017年に廃車となっています。
802F (モハ802-モハ1802)：1998年登場。最初に営業運転を開始した編成です。張り上げ屋根の後期型車体で、当初から黄色一色塗装でした。2002年からダイドードリンコの広告編成として、橙色をベースにしたラッピングが施されています。
803F (モハ803-モハ1803)：1999年登場。初期型車体で、当初から黄色一色塗装でした。初代ギャラリートレインとして使用されましたが、2020年に解体されました。
804F (モハ804-モハ1804)：1999年登場。中期型車体で、客用扉窓固定支持が金属押さえタイプです。
805F (モハ805-モハ1805)：2000年登場。中期型車体で、客用扉固定支持がHゴムタイプです。3代目ギャラリートレインとして使用され、「近江十景とれいん」のラッピングが施されています。
806F (モハ806-モハ1806)：2000年登場。中期型車体で、客用扉の黄色塗装化の標準仕様となりました。車椅子スペースも設置され、様々な広告ラッピングが施されてきました。
807F (モハ807-モハ1807)：2002年登場。初期型車体ですが、新運賃箱や車椅子スペースが設置され、転落防止幌も新設されました。イベント用電気回路も搭載されています。
808F (モハ808-モハ1808)：2002年登場。後期型車体で、フジテックの広告編成として赤色塗装でした。現在は「豊郷あかね」のラッピング車両として運行しています。
809F (モハ809-モハ1809)：2003年登場。後期型車体で、運賃箱はLE10形からの流用です。「いしだみつにゃん＆しまさこにゃん号」として運行していました。
810F (モハ810-モハ1810)：2005年登場。後期型車体ですが、初期・中期型の折衷設計です。日本コカ・コーラの広告編成を経て、現在は水色一色塗装です。
811F (モハ811-モハ1811)：2009年登場。初期型車体で、当初から客用扉が黄色塗装でした。「のぼうの城」のラッピング電車としても運行され、現在は伊藤園の広告編成です。

820形

820形は、西武401系を種車とするものの、改造内容が簡略化されたため、別形式として区分されています。2編成4両が在籍し、車体の改造は裾角の切り欠きと正面ステンレス飾り板の撤去程度に留まっています。車籍は西武鉄道時代から引き継がれています。

821F (モハ821-モハ1821)：1997年登場。後期型車体で、2022年に引退しました。
822F (モハ822-モハ1822)：1997年登場。後期型車体で、滋賀県警の広告編成（パトカー電車）として運行した後、近江鉄道創立120周年を記念して赤電塗装となりました。

これらの電車は、近江鉄道の主力として、地域の人々の生活を支えています。

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