近田豊年

近田豊年：孤島の少年からスイッチピッチャー、そしてゴルフインストラクターへ

1965年、高知県宿毛市沖の島に生まれた近田豊年は、幼少期から類まれな野球への情熱を燃やしました。周囲に野球チームがなかったため、太平洋に向かって石を投げたり、流れ着いた軟式ボールで壁当てをしたりと、独創的な練習方法で技術を磨きました。左利きながら右投げで野球を始め、中学時代は卓球や空手の全国大会出場経験もあるなど、多様な才能を開花させていました。

転機は中学3年生のとき。壁当てをしているところを中学野球連盟会長に見出され、明徳高校（現：明徳義塾高校）へ特待生として入学。1年生から一軍に抜擢されるも、コントロールに課題を抱え、甲子園出場は1試合のみに終わりました。

高校卒業後は社会人野球の本田技研鈴鹿でプレー。ヤクルトからのスカウトもあったもののドラフト指名を受けられず、南海ホークス（現：福岡ソフトバンクホークス）の入団テストを受けました。テストでは緊張からコントロールを乱しましたが、幼少期の経験から咄嗟に右投げでストライクを連発。この左右両投げの才能が認められ、ドラフト外で入団を果たしました。

入団後、杉浦忠監督の方針の下、左投げ中心の練習を行い、オーバースローの左投げとアンダースローの右投げを武器としました。特注の「6本指グラブ」を使用し、スイッチピッチャーとして注目を集めました。1988年、プロ初登板を果たしましたが、公式戦で左右両投げを見せたことはありませんでした。左肘の故障により手術を受けるなど、怪我にも悩まされました。

1989年にはアメリカへ野球留学し、右投げを含めた実戦経験を積みます。その後、阪神タイガースへ移籍するも、1991年に任意引退。故郷を離れ、ゴルフレッスンプロに転身し、独自のゴルフスクールを展開するなど活躍の場を広げました。

2007年には社会人野球チーム「関電グループ硬式野球クラブ」（現：関西硬式野球クラブ）にコーチ兼投手として入団し、現役復帰。アマチュア野球で再びマウンドに立ちました。プロ野球マスターズリーグにも参加するなど、野球への情熱は衰えることなく、様々な形で野球界に貢献しています。

2004年には楽天の監督だった田尾安志氏にテスト挑戦を直訴するも叶わず、アメリカのマイナーリーグトライアウトにも挑戦しましたが、結果は不合格でした。

現在もゴルフインストラクターとして活躍し、関西エリアで複数の駅前ゴルフスクールを経営。2021年には55歳にして、両手投げで130km/hを投げるギネス記録への挑戦を表明し、クラウドファンディングで資金を集め、2022年に記録更新に挑戦しましたが、惜しくも達成とはなりませんでした。

近田豊年の野球人生は、決して順風満帆ではありませんでした。しかし、持ち前の不屈の精神と、類まれな才能、そして何よりも野球への熱い情熱が、彼を幾多の困難を乗り越え、新たな挑戦へと駆り立てています。孤島の少年からプロ野球選手、ゴルフインストラクター、そしてギネス記録挑戦者へと変貌を遂げた彼の物語は、多くの人々に勇気を与え続けています。彼の今後の活躍にも期待がかかります。

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