近衛基実

近衛 基実（このえ もとざね）

近衛基実は、平安時代末期を代表する公卿の一人であり、その経歴は歴史に刻まれています。彼は藤原北家に属し、関白藤原忠通と源信子の間に生まれ、官位は正二位、摂政、関白、左大臣を歴任しました。通称は「六条摂政」と呼ばれ、近衛家を創始した人物としても知られています。基実の家名の起源は、京都近衛の北側にある室町東の近衛大路に面した近衛殿に由来しています。

幼少期と成長

基実は康治2年（1143年）に誕生しました。彼の出生は、忠通にとって待望の男子でしたが、当時の家族構成や事情から見ると、歓迎されるものではなかったとされています。基実は翌年に母の実家から高陽院に移され、久安元年の正月には家族の中で事実上の後継者として披露されました。その後、忠通は基実と頼長との縁組を解消し、基実が後継者に決定されたのです。

一方、基実の出発は決して順風満帆ではありませんでした。父が権力の座から失脚し、彼自身も初めは昇進が遅れました。彼は10歳で従三位に叙されるものの、重要な官職への任官には時間がかかりました。この間、基実は忠通と後白河天皇の支援を受け徐々に地位を高めていきました。

官歴と政界での活動

基実は保元2年（1157年）に正二位右大臣に任命され、その後16歳で二条天皇の関白に昇進し、藤氏長者となりました。平治の乱では父と共に天皇に仕え、一度に数々の名誉を得ますが、父の後を追うように豊かな権力を得ることができました。しかし、忠通の意向もあり、基実の後継者として相応しいかに関しては疑念が持たれることもありました。

やがて、長寛2年（1164年）に忠通が急死すると、基実は清盛の娘・平盛子と結婚し、平家との関係を深めました。清盛は近衛家の後ろ盾となることを望み、その影響力を利用して基実は一層の地位高揚を図りました。基実は長寛3年に摂政に就任しますが、わずか24歳で病に倒れ、早すぎる死を迎えました。

基実の後継者と近衛家の存続

基実の死後、彼の子供たちはまだ幼く、異母弟の松殿基房が摂政に就任しました。基実の死は近衛家の安泰を揺るがすものとなり、清盛の一族に所領が一時的に吸収される事態となりました。それでも彼の名のもとに近衛家は存続し、次世代の基通（盛子の養子）がその後を継ぐこととなりました。

基実の短い生涯ながらも、その影響力は大きく、摂関家としての近衛家は歴史に名を刻むこととなったのです。基実は享年24歳で亡くなり、正一位太政大臣を追贈されましたが、彼の名は後の世にまで語り継がれているのです。

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